採用活動は、採用して終了ではありません。すぐに辞められてしまったら意味がないからです。定着・戦力化までを見据えた採用活動について考察します。(2024年1月23日)
採用活動では応募者に対して人権の尊重や公平性の確保などが求められるため、企業は法令順守(コンプライアンス)に努めなければなりません。近年、企業のコンプライアンス意識について社会の関心が高まっており、重要性は一段と増しています。採用活動に関する法律について、注意しておきたいことや勘違いしやすいポイントなどをQ&Aで解説します。
Q.試用期間中であれば、「社風に合わない」という理由ですぐに辞めさせることができますか?
A.できません。通常の解雇と比べて解雇理由の範囲は広くなりますが、解雇をする「客観的合理性」「社会的相当性」は必要です。
試用期間でも労働契約は成立
試用期間とは、企業が実際に労働者に働いてもらって「正式に採用するかどうか?」を決めるために設ける一定の期間のことです。企業はあらかじめ試用期間中の労働条件(期間、賃金額、本採用の可否の判断基準など)を規定し、労働者に通知する必要があります。期間に、法の規定はありません。妥当な範囲であれば自由に決められます(一般的には1カ月〜6カ月程度)。
よく勘違いされるのが、試用期間は採用を見極める期間なので「簡単に解雇できるのではないか?」ということです。試用期間中でも労働契約は成立しており、自由に解雇できるわけではありません。通常の解雇と比べると解雇理由の範囲は広くなりますが、通常の解雇と同じように「客観的合理性」「社会的相当性」が必要です。「うちに合わない気がする」「うちでうまくやれるとは思えない」といった個人的な印象や思い込みのようなあいまいな理由は認められません。試用期間を設定した趣旨・目的を鑑み、客観的に相当な理由が認められる場合に解雇できます。
また、解雇通知も通常の解雇と同様で30日前に予告するか、予告の代わりに30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。ただし、試用期間の開始から14日以内であれば、「予告も手当も必要ではない」という特例が認められています。
自社の社員に必要な資質
試用期間は適性を判断する期間です。自社の社員に必要な資質や能力を洗い出し、試用期間でそれを判断するために「何をさせるべきか?」を考えて業務を行わせる必要があります。判断するためにチェックリストを活用したり、本人に日報やレポートを提出してもらうことなども考えられます。
解雇することになってもいきなり解雇するのではなく、まずは話し合いで雇用契約を解消するほうが望ましいと言えます。たとえ正当な理由があっても、労働者にとって解雇は深刻です。労働紛争などのトラブルに発展する可能性もあります。
話し合いの際、自社の社員に必要な資質を示したり、それを判断するチェックリストなどの客観的な裏付けがあれば、納得感を持たせることができるのではないでしょうか。
●文/三宅航太
2004年、株式会社アイデム入社。東日本事業本部データリサーチチーム所属。同社がWebサイトで発信する「人の戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務に従事する。さまざまな記事の作成や数多くの企業を取材。