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判例に学ぶ労使トラブルの処方箋/岡正俊

復職できるかどうかの判断基準〜J事件(大阪地裁平成11.10.4判決、労判771号25頁)〜

近年、労働関係の訴訟は社会的関心が高まり、企業にとって労使トラブル予防の重要性は増しています。判例をもとに、裁判の争点やトラブル予防のポイントなどを解説します。(2024年1月30日)

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【事案の概要】
 本件は、病気休職中であった原告が復職の意思を示し、現実に可能であるにもかかわらず、被告(会社)が休職期間満了による退職扱いとしたことが「就業規則等に違反し、無効である」とし、従業員としての地位確認等を求めた事案です。なお、被告の就業規則では「180日間欠勤し、なお、就業できないと認めた場合は、病気休職を命ずる」とされ、病気休職の期間は3年以内とされていました。

 原告は、鉄道会社の労働者で、車両の検査業務に従事していました。作業中異変があり、救急車で病院に運ばれ、脳内出血と診断されて入院しました。退院後、自宅療養、通院治療を行い、欠勤日数が180日を超えたため、平成6年12月13日付で休職を命じられました。平成9年10月21日付の精密診断書には、(1)右片麻痺4/5、(2)構語障害、(3)複視の後遺症、「軽作業なら行えるが右手の巧緻障害は認められる」、安静度については「特別な規制はない」と記載されていました。

 平成9年11月20日、被告復職判定委員会は「治療継続6ヶ月自宅安静が必要」と判定し、これを受けて被告は「休職期間が3年を超え、なお復職できない」と判断し、平成9年12月13日をもって退職としました。





【裁判所の判断】
 裁判所はまず前提として復職可否の判断について、「労働者が職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合においては、休職前の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動の実情、難易等を考慮して、配置替え等により現実に配置可能な業務の有無を検討し、これがある場合には、当該労働者に右配置可能な業務を指示すべきである」としました。

現実的可能性がある業務の検討

 その上で本件について、現実的可能性がある業務の検討を行いました。まず被告について、従業員約2万2800人を要する大企業であり、事業内容も多岐にわたり、職種も多様であるとしました。一方、平成9年12月当時の原告の状態は、下記ように判示しました。

(1)歩行については多少のふらつきがあり、時間がかかるものの、杖なしに独立の歩行が可能

(2)握力も左手に比べて右手の方が弱いものの、健常人のそれと大差がなく、ただ右手指の動きが悪いため文字を書くなどの細かい作業が困難

(3)構語障害については、会話の相手方が十分認識できる程度

(4)複視はあるものの、その程度は軽く、たまには焦点が合うこともある

 上記検討を行い、原告が就労可能と主張する各業務のうち、少なくとも工具室での業務は就業可能であり、同業務に配置替えすることも「可能であった」としました。そして、原告が行えない作業があるとしても、健常者と同じ密度と速度の労務提供を要求すれば労務提供が可能な業務はあり得なくなるとし、信義則上、使用者はその企業の規模や社員の配置、異動の可能性、職務分析、変更の可能性から「能力に応じた職務を分担させる工夫をすべきである」としました。
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●文/岡正俊(おか まさとし)
弁護士、杜若経営法律事務所代表。1999年司法試験合格、2001年弁護士登録(第一東京弁護士会)。専門は企業法務で、使用者側の労働事件を数多く取り扱っている。使用者側の労働事件を扱う弁護士団体・経営法曹会議会員。
https://www.labor-management.net/
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