人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2024年2月22日)
男性部下から、社内では前例のない「2週間」の育休申請が!
「田中さん、男性の部下から、“2週間、育休を取得したい”という申請があったんですよ。うちの会社では、そんな前例はないし…。どうすればいいですかね?」
去年、知人から上記のような相談を受けました。彼は、あるメーカーの新商品開発部門の管理職です。
男性の育休申請は、ここ最近、増加傾向にあります。共働きが当たり前になった今、男性が育児を自分事として考えることは、日本の社会においても、非常に大切なことだと私は思っています。
まずは、令和4年4月から段階的に施行されている改正育児・介護休業法について簡単にポイントを説明しておきましょう。
そもそも育児・介護休業法は、男女の性差にかかわらず、出産・育児・介護といったライフイベントと仕事とを両立するために成立されたものです。改正法は、さらに育児休業の分割取得が可能になるなど、より柔軟に働き方を調整できるようになっています。
とりわけ「産後パパ育休(出生児育児休業)の創設」は、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して取得できるというものです。
また、令和5年4月からは、従業員が1,000人を超える企業について、「育児休業取得状況に関する公表」が義務付けられています。男性従業員の「育児休業取得率、または育児休業・育児を目的とした休暇の取得率」を年に1回、一般の人でも閲覧できる形で公表しなくてはならないのです。
以上のようなことを知人に伝えると、「え? 社内ではそんな前例がないから、自分としては穏便な形で却下するか、せめて5日以内にとどめてもらうか、そういう風に考えていたのですが…」と頭を抱えてしまいました。
管理職の方の誤った認識で多いのが、「育児休業の制度があるかどうかは会社による」という思い込みです。正しくは、育児休業は法律で認められたものなのです(また、育児休業給付金は「会社が支払っている」と思っている管理職も意外に多く、これは加入している雇用保険から労働者に対して支給されるものです)。
どの企業でも、男性の育休申請を頭ごなしに否定することはNGだという認識は徐々に浸透してきています。しかし、上司が無意識・無自覚に「休んでいる間の仕事は、どう考えているのか?」とか、「(育児をやるという前提なのに)休み中に何かやりたいことでもあるのか?」などと、無神経な発言をすることは少なくありません。
当然ながら、育児をしたいという男性に対して、「もう出世は諦めたということなんだな」や「戻ってきたら転勤が決まっているから」などの嫌がらせをする「パタハラ(パタニティ・ハラスメント)」は論外です。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。