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応募者を見極める選考基準の新常識/奥山典昭

第6回 究極の採用基準は、「自然体」である

採用選考の常識や通念はアップデートされずに根付いているものが多く、合理性を伴わないものも少なくありません。既成概念から脱し、自社に必要な人を採用するための、新しい考え方や知識を解説します。(2024年3月11日)

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採用現場でのよくある誤り

 
採用面接で、応募者に「あなたには、担当業務の他に〇〇の新たな企画にも携わっていただこうと考えているのですが、できそうですか」と尋ねたとします。しばらく黙って考えていたその応募者は、ゆっくりと顔を上げて静かな口調でこう言いました。「やってみないとわかりません」

 「やります!」「やらせてください!」のような「前向きな」反応を強く期待していた面接官であれば、そんな応募者を見て、「やる気に欠ける」「意欲が足りない」などと即座に評価してしまうでしょう。しかし、思慮深く責任感の強い人がいきなりそんな質問を受けたら、「できる」という根拠を持てないまま安易に安請け合いするでしょうか。





 採用選考の説明会や集団面接などでは、誰もが型通りの元気な挨拶から始まる対人スキームの励行に余念が無く、大きな相槌や頷きを欠かさず満面の笑みを浮かべて傾聴の姿勢を示してくれます。しかしそんな中で、相槌も頷きも控えめであまり愛想笑いも見せてくれない、静かな表出に終始する一人の応募者がいたとします。

 慇懃無礼とも言えるような「礼儀作法」を示し、「元気な良い人」のアピールを繰り返す人たちにすっかり慣れてしまった採用関係者は、その応募者を、「活力に欠ける」「協調性が足りない」「対人スキルが低い」などと評価してしまうかもしれません。周囲に比べて少し無愛想に見えるその表情や言動は、過剰な媚びや迎合を必要としない「心の成熟」の証なのかもしれないのに。


「自然体」という概念ともっと仲良く

 
採用選考の場においては、面接官や採用関係者に対して多かれ少なかれ迎合的な言動を示す応募者が大多数です。そんな人たちに慣れ、そんな言動が「当たり前」としか感じなくなってしまった採用関係者には、上述のような行動が、「基準に満たない行動」と思えることもあるでしょう。しかしそんな状況は、重大な機会損失リスクに溢れています。

 これまで何度も述べてきましたように、思考力や利他性の前提となる「精神的自立」は、仕事ができる人に共通して備わる集約的要件です。

 精神的に自立している人は、ありのままの自分を受け入れています。自分を良く見せようとする必要が無いので、言動に過剰感や不自然さが見られません。その、無理や無駄の無い肩の力が抜けた感じが、「自然体」と称されます。

 精神的に自立した人はほぼ例外なく自然体なので、採用選考で本当に自然体の人を見つけられれば、その人が「逸材」であることがほぼ確定してしまうことになります。すべての採用関係者に「自然体」という概念ともっと仲良くして欲しいと思います。
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●文/奥山典昭(おくやま のりあき)
概念化能力開発研究所株式会社代表、組織再編支援コンサルタント、プロフェッショナルアセッサー
大学卒業後、商社での海外駐在、大手電機メーカー、人事系コンサルティング会社などを経て、1999年に概念化能力開発研究所株式会社を設立。人の能力や資質を数値化して客観的に適性を評価する人材アセスメントと、組織に必要な人物像を抽出する採用アセスメントを駆使し、企業の組織再編や採用活動を支援。現在、応募者の本質を見抜くノウハウを企業の経営者や採用担当者に伝える採用アセスメントの内製化支援に注力している。著書に『デキる部下だと期待したのになぜいつも裏切られるのか』(共著・ダイヤモンド社)、『間違いだらけの優秀な人材選び』(こう書房)、『採るべき人 採ってはいけない人』(秀和システム)、『採るべき人採ってはいけない人第2版』(秀和システム)
https://conceptual-labo.co.jp
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