褒めるべきときに褒めるのが上司の役割
私が部下を褒めるときと叱るときに、自分自身の原理原則としていることを以下に伝えましょう。
・褒めるのは、【効果的なタイミングで】【みんなの前で】【結果>プロセス】
・叱るのは、【すぐその場で】【個別に】【結果<プロセス】
というものです。
褒めるときの【効果的なタイミングで】というのは、本人もうれしいし、周りのメンバーたちも刺激を受けるのを考えてのことです。だから【みんなの前で】を意識します。
また、プロセスを褒めてはダメということはないのですが、常に結果を踏まえた上でプロセスを褒める必要があります。例えば、営業成績が全然上がってないのに、誰よりも朝早く出社する部下に対して、「朝早くから感心だね」などと褒めてしまうと、本人が勘違いすることがあるからです。
叱るときの【すぐその場で】というのは、本人の記憶が薄れたときにいくら叱っても、相手には叱る内容がまったく刺さらないからです。なので、なるべく時間を置かないことが大切になります。
また、【個別に】というのはプライドを守るため。ただ、職場の納得感や公平感を考慮して、あえてみんなの前で叱る場合もありますが、その場合もプライドへの配慮は欠かせません。結果とプロセスでは、結果を待って叱るのではなく、プロセスの段階で早め早めに修正してあげることを心掛けています。
さて、ここで質問です。
【褒める】の反対語は何でしょうか?
そうですね。多くの方は【褒める】の反対は【叱る】と答えるでしょう。では、【叱る】の反対語は何でしょうか?
みなさんからは、「【褒める】の反対が【叱る】なら、【叱る】の反対は【褒める】じゃないですか」という声が聞こえてきそうです。
言葉としては、それで間違いありません。しかし、マネジメント上、【褒める】の反対は【褒めない】であり、【叱る】の反対は【叱らない】なのです。つまり、褒めるべきときに褒めて、叱るべきときに叱るのは、上司としての責務だと考えてください。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。
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