東京都がカスハラ防止条例を提出
9月18日、東京都はカスハラの防止条例案を都議会に提出しました。成立すれば全国初の条例となり、2025年4月1日の施行を目指しています(罰則は設けられていません)。
カスハラ対策は、国でも検討が進んでいます。8月1日、厚労省の有識者検討会はカスハラ対策の強化に関する報告書をまとめました。具体策としてマニュアルの整備、被害を受けた従業員への相談対応などをあげています。対策の措置義務などの詳細は今後、労使の代表を交えた審議会で協議して関連法改正案の検討を進め、2025年通常国会での提出を目指すとしています。
近年、カスハラは小売業やサービス業を中心に社会問題化しており、自治体や企業の中には法制化に先駆けて対策を打ち出すところが増えています。例えば自治体では、職員のネームプレートを名字だけにしたところがあります。プレートに記載されたフルネームをもとに、個人情報が特定される懸念があるためです。小売業では、イニシャルや仮名での表記を認めているところがあるようです。
AIで客の威圧的な声を変換
カスハラ対策ツールを開発し、実用化を目指す企業も出てきています。富士通は東洋大学と共同で、カスハラを疑似体験できるAIツールを開発しました。カスハラ客に応対する従業員の教育などに役立ててもらうことを想定したものです。また、ソフトバンクは東京大学と共同で、電話をしてきた客の声を変換する技術を開発しました。AIで怖い声を識別し、威圧感を抑えた声に加工するものです。電話によるクレームはエスカレートしがちで、コールセンターではオペレーターの離職率が高い一因だと指摘されており、対策が求められています。
カスハラ対策には実践的な対応が求められますが、会社としての方針や姿勢をはっきり示すことも重要です。安心して働ける職場でなければ、従業員は能力を発揮できないばかりか、場合によっては不安を感じて退職してしまうかもしれません。カスハラから従業員を守ることは企業の発展にも関係しており、毅然とした対応が求められています。
※参考
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●文/三宅航太
2004年、株式会社アイデム入社。東日本事業本部データリサーチチーム所属。同社がWebサイトで発信する「人の戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務に従事する。さまざまな記事の作成や数多くの企業を取材。