Z世代は「打たれ弱い」「必要以上に落ち込むことが多い」「ちょっとしたことですぐに辞めてしまう」…などの特徴があると言われています。「だから、今どきの新人は扱いづらい」そう思っている上司、経営者も多いでしょう。
厚生労働省の調べによると、新卒3年目までの離職率は大卒、高卒ともに3割を超えています。1年目の離職率は、高卒で約2割、大卒で1割程度です。この数字は多少の変動はあるものの20年以上前から大きな変化はありません。新人がすぐに辞めてしまうというのは、今に始まったわけではないことになります。実際、筆者は今から34年前に新卒としてアパレル企業に入社しましたが、同期の約半数が翌年までに辞めてしまいました。なぜ、いつの時代も新人の離職率は高いのでしょうか?
居場所が見つからない
あなた自身が入社したころを思い出してみてください。同期入社のメンバーが、同じ部署に何人もいる場合をのぞき、周りは先輩や上司ばかりというのが普通でしょう。そうした中で、自分の居場所をすぐに見つけることができる新人は少数派です。居場所がないと気持ちが落ち着かず、不安な気持ちになります。心が安定しないとモチベーションも上がりづらくなります。
毎日、覚えることが多く、知らないことばかりの中で仕事に取り組まなければなりません。分からないことや疑問に思うことがあったときに、すぐに尋ねたり、話しかけたりできないと、常にもやもやした気持ちでいることになります。当然、ストレスがたまるでしょう。そんなときに、ミスをして怒鳴られたとしたら、心が折れてしまう場合もあります。その後、離職してしまうケースも少なくありません。新人スタッフの離職防止で大切なのは、彼、彼女たちの居場所を早期に作ることです。
話しやすい環境を作る
居場所を作るには、新人が気兼ねなく悩みを相談でき、安心、安全と思える心理的安全性が担保された環境を整えることが必要です。心理的安全性とは、組織や職場において、誰に対しても自分の意見や気持ちを安心して伝えられる状態を指します。
ただ、上司は新人からすれば、年齢も社歴も随分上という場合が多いので、雲の上の存在です。そうなると、「こんなことを聞いたら悪いのではないか?」「忙しそうだから別の機会に話そう…」と気を使ってしまい、コミュニケーションを取ることを諦めてしまいがちです。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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