「若手スタッフの定着率が上がらない」ことは、上司、経営者の悩みとして、常に上位に挙がってきます。なぜ、すぐに辞めてしまうのでしょうか?
私が知る飲食チェーンで退職者へのアンケートを行ったところ、「ちゃんと教えてくれなかったから」が退職理由の1位でした。新人研修が行われているにもかかわらず、どうして“教育してもらえなかった”と思い、退職する人が多いのか? それは、現場で行われている教育法に問題があるからです。
教育に手を抜いたら、仕事ができるようにはならない
かつて私がセブンイレブンのFC店を経営していたころ、出店エリアの店舗の新人教育の期間は3日〜1週間が平均でした。複雑で膨大な店舗業務を、そんな短い期間で「すべてマスターできるのか?」と言うと、超人的な記憶力がない限り無理です。そうであるのに、上司やトレーナーは、「分からないことがあれば質問してね」と言って、研修を早々に切り上げてしまいます。入社したばかりの新人は、分からないことが分からないので、それは言ってはいけないNGフレーズです。
ほとんどの新人スタッフは、教育が中途半端な状態で現場に立たされ、右も左も分からずに業務をこなすことになります。そのうえ、ミスをすれば怒られたり、お客様からクレームをもらったりするので、徐々にストレスがたまってきます。不安な状態から不満を感じるようになり、その後、上司や企業に対して不信感を抱くようになり辞めていくのです。
新人の教育は、時間をかけて、丁寧に教えることが不可欠です。確実に教えきるには、我流ではなく作業マニュアルを活用すると、教え漏れがなく効率よく進められるので時間も短縮できます。一通り教えた後は、そのままにせずに教えたことの理解度を確認するテストを随時行いましょう。未習得の箇所を繰り返しトレーニングすれば、確実に教えきることができます。
人手不足の中で、そんな手間暇はかけられないと思うかもしれませんが、教育に手を抜けば、スタッフはいつまでも仕事ができない人のままです。本人も、既存のスタッフも顧客も、上司(経営者)も困るでしょう。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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