仕事の任せ方を紹介している本は数多く出版されています。ネットを検索すれば、膨大な数のノウハウを紹介するWebページが表示されます。生成AI(ChatGPT)に質問したら、『部下に仕事を任せるためには、信頼関係を守りながら、明確な指示とフォローアップを行うことが重要です』と丁寧に答えてくれ、そのやり方も紹介してくれます。
このように、任せるノウハウは、世の中にごまんと存在しているにもかかわらず、企業の現場では、任せることができずに、頭を抱える上司や経営者が多数派を占めています。それは、なぜか?
部下に任せることに対する、心理的なブレーキが掛かってしまうことが大きな原因です。かつての私もそうでしたが、任せた後に、最悪の未来ばかりを想像してしまうのです。そうなると任せることはできません。
個別対応で任せる
部下に安心して仕事を任せられるようになるには、一人一人にマッチしたやり方で任せていくとうまくいきます。もちろんですが、部下が10人いれば、十人十色でそれぞれ特性が異なります。私は人材育成やマネジメントは、個別対応が大事だと、研修やコンサルティングの場で常にお伝えしています。仕事を任せることも同じです。
まずは、各自の特性を把握することから始めましょう。性格や得意な仕事、苦手な業務などの他に、どんなことに興味を持っているのか? 個人のビジョンについても把握しておきましょう。任せる仕事が将来の夢につながっていると分かれば、積極的に業務に取り組むからです。
20世紀最高と称される名監督の任せ方
アメリカ大リーグで大谷選手が所属するロサンゼルス・ドジャースが、ワールドシリーズで優勝しました。今季のドジャースは強かったですね!
かなり前の話ですが、日本人投手としてドジャースで大活躍をした野茂英雄選手をご存じでしょうか? 当時のドジャースも強豪球団の1つでした。そのチームを率いていたのがラソーダ監督でした。彼は20年間、ドジャースの監督を務め、何度も優勝へと導き、20世紀最高と称される名監督でした。日本のテレビCMにも登場していたので、50歳前後の方は記憶がある方も多いかと思います。
ラソーダ監督が行っていたマネジメントが個別対応の任せるマネジメントです。そもそもスポーツの監督は一部を除き、自分ではプレーをしませんので、試合中は選手たちに任せるほかありません。その任せ方によって勝敗が決まると言っても過言ないでしょう。
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●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
https://okamotofumihiro.com/