4月に育児介護休業法が改正されました。仕事と育児を両立するための支援メニューがより多くなり、対象者が広がっています。
今回は前回に引き続き、育児休業(育休)に関する対応について解説します。育休は仕事と育児を両立するための重要な制度ですが、復帰に際しては社員の不安や迷いが生じることが少なくありません。特に、初めての出産・育児を経験する社員は、想像以上に育児の負担が大きく、復帰への意欲が揺らぐことがあります。企業としては、単に「制度を整える」だけではなく、社員がスムーズに職場復帰できるように適切なサポートを提供することが重要です。
■今回の事例
健診センターの事務職Aさん(26歳)は、初めての出産を経験しました。出産前は仕事に意欲的で、育児休業後も復職する意向を示していました。しかし、子供が生まれてからは母性が芽生え、育児への責任感が強まるにつれて、復帰への不安を感じ始めています。
また、元の職場では残業が多かったため、仕事と育児の両立ができるのか、焦りを感じています。上司のBさん(42歳)はAさんの状況を理解しつつ、円滑な職場復帰を支援したいと考えています。しかし、どのような対応をすればAさんが安心して復帰できるのか、どのようなフォローをすれば両立できるのか、悩んでいます。
■解説
育休中から面談を実施する
育児休業中は、仕事から一時的に離れることで、職場の状況や業務の変化についての情報が得られず、復帰に対する不安が高まりやすくなります。そのため、育休中に定期的な面談を実施し、Aさんとコミュニケーションを取ることが重要です。
面談のタイミングとしては、産後の生活が落ち着く産後3カ月〜6カ月ごろや、育休終了の3カ月〜1カ月前など、段階的に行うのが理想的です。面談では、以下のようなポイントを確認するとよいでしょう。
・育児の状況(生活リズムや保育園の確保など)
・職場復帰に対する考え方や不安
・復帰後の働き方の希望(時短勤務、フレックス勤務、リモートワークの可否など)
・現在の職場の状況(業務内容の変更、サポート体制など)
このような面談を通じて、Aさんが「復帰について相談できる環境がある」と感じられることが安心感につながります。また、上司としても復帰に向けた適切な準備を進めることができ、スムーズな復帰をサポートしやすくなります。
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●文/山田真由子(やまだ まゆこ)
山田真由子社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士、公認心理師、キャリアコンサルタント。26歳のときに3度目の受験で社会保険労務士に合格。さまざまな業種にわたり、約15年のOL 生活を経て、2006年12月に独立開業。現在、「誰もが輝く職場づくりをサポートする」をミッションとして活動している。経営者や総務部担当者などから受けた相談件数は延べ10,000件以上、セミナー登壇は1,500回以上を数える。著書に『外国人労働者の雇い方完全マニュアル』(C&R研究所)、『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)、『すぐに使える!はじめて上司の対応ツール』(税務経理協会)。