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人事のための「お金」の学び(小橋一輝)

粗利を増やす2つの道〜値上げと生産性向上〜

人事の仕事(採用・定着・育成など)は、「会社のお金をどう使うか?」を考えることでもあります。人事に求められる会社のお金に関する知識や考え方を解説します。(2026年5月12日)

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自社はどちらのアプローチが有効か?

 値上げと生産性向上、「どちらが有効か?」は業種や競合環境によって異なります。判断の手がかりになるのが「原価率」です。原価率は「売上原価÷売上高×100」で求められます。

 原価率が高い業種(例:小売業・飲食業・製造業など)は、仕入れや材料費の割合が大きいため、値上げによる粗利改善の効果が出やすい傾向があります。一方、原価率が低くサービスや人の労働が収益の中心となる業種(例:コンサルティング・IT・介護など)では、価格転嫁の余地が限られる代わりに、生産性向上によって1人当たりの生み出す価値を高めることが有効です。

 自社の損益計算書で原価率を確認し、「値上げの余地があるか?」「生産性を高める余地があるか?」を検討することが、賃上げ原資の議論における出発点になります。また、どちらか一方ではなく、両方を組み合わせることで、より着実に粗利の底上げを図ることができるでしょう。





人事担当者が「粗利」に関心を持つ意味

 粗利の改善は、一見すると営業や経営企画の仕事のように見えます。しかし、人事担当者がこの視点を持つことには明確な意義があります。採用の場面では、「この人材を採用することで生産性はどう変わるか?」という問いを立てられるようになります。育成・研修においては、「どのスキルを伸ばせば、1人当たり粗利が上がるか?」という基準で優先順位をつけられます。

 さらに、経営者に賃上げを提案する際、「この施策で粗利がこれだけ増えるので、賃上げ原資はこれだけ確保できます」という具体的な根拠を示せるようになります。賃上げは「したい・できない」の感情論ではなく、粗利という数字に基づいた経営判断です。その判断を支える情報を持ち、経営者に提示できる人事担当者は、組織の中で確実に存在感を高めていきます。


今回の「一歩」

 今回も、すぐに取り組める確認事項をお伝えします。
 直近の損益計算書を手元に置き、「売上原価÷売上高×100」で自社の原価率を計算してみてください。あわせて「粗利÷従業員数」で1人当たり粗利も算出してみましょう。

 この2つの数字を把握するだけで、「値上げと生産性向上のどちらに取り組むべきか?」の方向性が見えてきます。まず、自社にとって「最適な手段は何なのか?」を把握し、経営者と人事担当者が共通の認識を持つことが重要です。



●文/小橋一輝(こばし かずき)
株式会社Elavis代表取締役、財務・金融コンサルタント、銀行取引アドバイザー
大学卒業後、地方銀行に入行。融資渉外担当として、多種多様な企業の創業から事業承継までのさまざまなステージをサポート。2019年に独立し、元銀行員としての豊富な経験を活かし、企業の資金調達や銀行取引の健全化などを支援。これまでに500社以上の企業、延べ1,000人以上の経営者・起業家・開業医を支援し、財務戦略の最適化をサポート。セミナー登壇・企業研修の実績多数。
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