第5回 「仕事力(基本・専門力)」強化プログラム
経営の源泉は人です。企業の存亡は、「人をどう育てていくか」にかかっているといっても過言ではありません。時代環境を踏まえながら、今後の社員教育のあり方について考察します。
1.「現場力」が日本の強みである
これまでの日本企業の驚異的な発展は、工場などの「現場力」が強いことで実現してきました。世界的に通用する「カイゼン、カンバン、アンドン等」の言葉に代表されるように現場でのQC(品質管理)活動や改善活動等で品質アップとコストダウンを追求してきた結果です。
昨今の韓国・台湾・中国企業などに世界競争の中で日本企業が苦戦をしているのは、「経営戦略」等の「経営力」に課題があったからです。日本国内競争から世界競争へ移行した中での「グローバル戦略」で混乱しているからにすぎません。「技術力」や「現場力」においては、海外競合企業に決して劣っていません。きっと数年のうちには、この劣勢・混乱を収拾し再躍進していることでしょう。その間に「現場力」「技術力」をおろそかにしてはなりません。
この「現場力」が強い企業の共通点は、前回述べた「人間力」という基礎の上に、今回の「仕事力」がしっかり実現できていることにあります。
私の考える「仕事力」についての概念を再掲(※第3回に掲載)しておきます。
2.「仕事力」の基本を身につけさせよ!
トヨタ自動車などの「現場力」の強い企業の特長は、仕事の基本である「報・連・相」「PDCA」「5S」「5W2H」等を徹底して身につけ、実践していることにあります。「意識化」⇒「行動化」⇒「習慣化」⇒「習性化」のプロセスの「習性」になるまでやり切っています。職場風土・企業風土にまでなるよう徹底しています。
一方、「現場力」の弱い企業は、「ISO」「コンプライアンス」「CSR」などの新しい技法や手法やルールに次から次へ飛びつき、すべてが中途半端になっています。「意識化」⇒「行動化」のレベルで新しいことを始めるために、「習慣化・習性化」にならず、せっかくの投資が無駄になっているのです。このことは脳科学の観点からも証明できます。人間脳の特性の1つに「忘れる」ということがあります。したがって、しっかりと覚えていない・身についていないうちに、新しい知識や手法を導入すると以前に覚えたものを忘れてしまうのです。「現場力」の弱い企業は、この落とし穴にはまっているのです。
これらの「仕事力」は、今までの日本企業では現場の先輩から後輩への「OJT(職場内教育)」でしっかりと指導・育成されてきました。高度な技術の伝承は、基本力をつけさせるところから始まったのです。最近では、ロボットやパソコンなどの道具が進化した結果、「仕事力」の弱体化が進んでいることを懸念しています。仕事の基本力を身につけさせる「意図的」「計画的」「継続的」な取り組みが重要な時期に来たようです。「現場力」を維持・強化することが、企業の発展に欠かせないことを肝に銘じたいものです。
トヨタ自動車や本田技研など「現場力」の強い企業は、「技術高等専門学校」「社内技術大学」や「匠塾」などを設置して仕事の基礎・基本を伝承するしくみをつくりあげています。
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田中勉●サービス企業、教育企業で人事、教育、事業開発担当マネージャー、役員(専務)を経て、現在「温故知新」研究所・代表。企業の社員研修をはじめ、講演、セミナー等で活動。自らも営業の現役として、科学的で人間的な営業活動を実践中。日本営業道連盟・代表・九段・正師範。
http://homepage3.nifty.com/consul_tanaka/
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