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労働関連法で実務に直結した部分をクローズアップし、分かりにくい点や対応策などを解説します。
長時間労働是正が求められる中、時間外労働に関する協定(36協定)の重要性が再認識されています。その反面、36協定には見落としがちな事項も少なくありません。今回は主に締結前の準備段階、次回は36協定の締結内容を中心に、2回にわたってまとめてみます。
<届出と罰則>
36協定は労働者がたった1人でも、労基法32条に定める法定労働時間を超えて(または法定休日)労働させる場合、届出が必要です。労使で協定を締結しただけでは、効力が発生しません。違反時は法律上の使用者である事業主のみならず上司も対象となり、「6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金」(労基法119条)が適用されます。
<労働者の締結当事者の要件と選出>
36協定は、労働者の過半数で組織する労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者(労働組合がない場合)と、使用者の間で締結することが必要です。労働者の過半数を代表する者は、次のいずれにも該当する者でなければなりません。
・監督または管理の地位にある者でないこと
・労使協定の締結等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であること
なお、対象となる労働者は、正社員のほかに契約社員、パート・アルバイト、出向者も含まれます。正社員のみで構成される労働組合の場合、注意が必要です。社内にパートなどが増え、正社員比率が減少して過半数でなくなれば、労働組合の代表者は過半数代表者ではなくなり、締結当事者となりえないからです。
<適用が及ばない労働者>
次の労働者は36協定の適用が及びません。
・年少者(18歳未満)
・妊産婦(本人の時間外・休日労働をしない旨請求がある場合)
・育児(小学校就学の始期に達するまでの子を養育)や介護(対象家族を介護)を行う労働者(本人の請求がある場合は制限時間(1カ月24時間、1年間150時間)を超える労働時間の延長は不可)
このように36協定は締結前の準備段階から、さまざまな制約があることをまず知っておかねばなりません。
●文/田代英治(たしろ えいじ)
社会保険労務士。株式会社田代コンサルティング代表取締役。神戸大学経営学部卒。企業の人事制度の構築や運用、人材教育などに取り組む。著書に「人事部ガイド」(労働開発研究会)、専門誌への寄稿など執筆実績多数。
http://tashiro-sr.com/
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