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労働関連法で実務に直結した部分をクローズアップし、分かりにくい点や対応策などを解説します。(2020年3月5日)
会社が従業員を雇用する際に、身元保証契約を取り交わすことがありますが、民法改正(本年4月1日施行)による影響を受けるため、実務的な見直しが求められます。
<改正の目的とアウトライン>
身元保証契約とは入社後、従業員が会社に損害を与えた場合に備え、損害を賠償することを約した上で親族等が保証人となり、連帯して責任を負う旨を会社に対し保証するものです。今回の改正では、個人保証人の保護を強化し、「極度額(上限額)の定めがない個人の根保証契約は無効」とされます。身元保証契約も根保証契約に該当するため、民法改正後は、身元保証契約に極度額(上限額)を定めて記載する必要があります。
(民法の改正時点で、すでに締結されている身元保証契約については極度額の有無は問題となりません)
<改正の影響>
本年4月1日以降は、具体的な損害賠償額を定めていない身元保証契約は無効となり、実際に会社に損害を与えるようなトラブルが発生しても何の効力も持たないことになります。そのため、損害賠償額を設定する必要があります。上限額は法律の定めはなく、会社で決められますが、高額であるほど高度な保証能力が求められ、保証人の引き受け手が限られます。
さらに、損害の発生時期・内容および金額を入社時点で予測することができない中で、会社は、本人および身元保証人との間で合意が得られるような上限額の設定を行うことが求められます。
<留意事項>
身元保証契約の有効期間は、明記がないと3年、明記がある場合でも5年です。自動更新はできないため、期間終了後はあらためて作成が必要です。有期雇用契約が終了して更新する際、あるいは定年退職後に再雇用契約を締結する際にも、あらためて作成する必要があります。また、損害賠償額は裁判において、業務内容、損害の発生状況、過失の割合等を総合的に勘案して最終的に決定されるため、身元保証契約で設定した上限額とならないこともあり得ます。
今回の民法改正を機に、身元保証契約が形骸化しないためにも、自社で身元保証契約を継続することの必要性を再検討することも重要です。
●文/田代英治(たしろ えいじ)
社会保険労務士。株式会社田代コンサルティング代表取締役。神戸大学経営学部卒。企業の人事制度の構築や運用、人材教育などに取り組む。著書に「人事部ガイド」(労働開発研究会)、専門誌への寄稿など執筆実績多数。
http://tashiro-sr.com/
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