第10回「感性力&創造力」強化プログラム
経営の源泉は人です。企業の存亡は、「人をどう育てていくか」にかかっているといっても過言ではありません。時代環境を踏まえながら、今後の社員教育のあり方について考察します。
1.「感性力」があることは日本人の誇り
今、日本の流通業(スーパー・コンビニ・専門店等)や飲食業、サービス業(宅配便等)が急速に海外展開して、進出国のお客さまから大きな支持を得て業容拡大しています。それは、日本企業の誠実さと繊細な接客サービスや技術・仕組みが現地の顧客に支持されているからだと言われています。
それら支持されているもののうち、技術や仕組みなどの「ハード(商品)・ソフト(技術)」部分はすぐに現地の企業や店舗がまねしてしまうことでしょう。しかし、接客サービスの中でも顧客への気配りや心配りなどの思いやり・サービスについては「ハ―ト(心)」部分のために模倣するにはかなりの時間を要することになるでしょう。
近年、家電メーカー等の日本企業が韓国・台湾・中国などの企業に連戦連敗であるのは「ハード(製品)とソフト(技術)」面での勝負に負けたからに他ありません。全て目に見える部分で負けています。
しかし、流通サービス業のように「ハート(心)」面は目に見えず、日本人としての文化・感性から発しているものであるため、模倣するには時間がかかると思われます。接客サービス面で必要な顧客の立場に立つという「感性力」は、日本人の強みであり、誇りであるとも言えます。
2.「感性」を鍛えるために
それでは、感性を鍛えるためにはどのようにすればよいのでしょうか。「感性力」自体は人間の持つ五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を磨き高めることで実現します。その方法は「自然に触れる」「名作に触れる」「音楽に触れる」などによって鍛えることができます。
また、人への気配りや心配りなどの思いやりの面を向上させるには、先人より引き継がれてきた文化や価値観や風土などを継承することによって実現することができます。文化面としては、「短歌・俳句・川柳」などで花鳥風月を詠むことや夏祭り・秋祭りなど自然への感謝する祭事に参加することなどで培われてきます。
価値観としては、「江戸しぐさ」や「京のおもてなし」などの各地に残る風習やことわざ・格言などから引き継がれてきました。それに加えて、四季折々の季節の変化や自然現象から受けるさまざまな変化等の風土面の影響によって、継承されてきたのです。
このように日本人の特性は四季の豊かな環境で生まれ育つことによって培われてきたものでしたが、生活の欧米化によってそうした優れた能力が急激に低下していることに危機感を感じずにはおれません。
古き善きものを受け継ぎ、現代に通用する形に発展させる「温故知新の精神」が日本企業の再生・繁栄につながると感じております。企業教育等でも「感性力」を高めることの重要性に気づくことが肝要です。ここではすてきな「江戸しぐさ」の一例を次に紹介しておきます。
※すてきな「江戸しぐさ」(越川禮子著「江戸しぐさ」より抜粋作成)
「江戸しぐさ」というときの「しぐさ」は、ただ形だけのしぐさ(仕草)ではありません。思う草、「思草」と書きます。「思う」はそのままの意味、「草」は植物の草のことではなく、「言い草」という言葉などで使われる「行為」という意味です。
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田中勉●サービス企業、教育企業で人事、教育、事業開発担当マネージャー、役員(専務)を経て、現在「温故知新」研究所・代表。企業の社員研修をはじめ、講演、セミナー等で活動。自らも営業の現役として、科学的で人間的な営業活動を実践中。日本営業道連盟・代表・九段・正師範。
http://homepage3.nifty.com/consul_tanaka/
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