メンタルリスクを高める3つの依存行為
仕事のストレスが蓄積すると「心のよりどころ」となるものが欲しくなるものですが、気をつけたいのは、その対象とのほどよい付き合い方です。自制がきかないほどのめり込んでしまう場合、「依存」という危険な状態に近づいているかもしれません。
メンタルリスクを高める依存行動には、物質への依存、行為への依存、関係への依存という3つのタイプがあります。
1)物質への依存
アルコール、たばこ、薬物など、依存性のある物質の摂取をやめられなくなる
2)プロセスへの依存
ゲーム、買い物、仕事、エンターテイメントなど、快感を伴う活動をやめられなくなる
3)関係への依存
恋愛、親子関係など、特定の人間関係に執着し、その関係なしではいられなくなる
身体依存のおそろしさ…無自覚に進むアルコールへの依存
上記の3つの依存のなかで、最も気をつけたいのはアルコールへの依存です。アルコールは少量をたしなむ程度なら、体の緊張をゆるませ、血流や食欲を促してくれる良い効果があります。ですが、習慣的に摂取していると身体に耐性が形成され、同じ酒量では酔えなくなってしまいます。
特に毎夜の晩酌が欠かせない場合には、自覚のないままアルコール依存が進んでいる可能性も考えられるので、連日の飲酒はひかえたほうがよいでしょう。「2日飲んだら1日休む」など自分なりのルールをつくることで、お酒とのほどよい距離を保っていくことが必要です。
スマホ・パソコン生活で増加するエンターテインメントへの依存
また近年増えているのが、エンターテインメント(娯楽)への依存です。特に若い世代には、帰宅後や休日に自宅でゲームをするのが何よりの楽しみ、という人も多いでしょう。アイドルの動画や音楽に胸をときめかせたり、同じ趣味の仲間同士でSNSを通じて情報交換をしあったりして、プライベートタイムを楽しんでいる人も多いと思います。
エンターテインメントは、日常の憂さを忘れさせてくれる大切なものですが、はまりすぎると生活リズムを崩すもとになってしまいます。特に、強い快感をもたらすエンターテインメントは「報酬系」と呼ばれるドーパミン神経を刺激するため、同じ快感を何度でもくりかえし味わいたいと感じるようになります。「ほどほど」の自制が効きにくいのです。
●文/大美賀直子(おおみか なおこ)
メンタルケア・コンサルタント、公認心理師・産業カウンセラー
大学卒業後、出版社やIT関連企業などで編集職に携わった後、独立。心理学を学び、メンタルヘルスに関するさまざまな資格を取得。インターネットやテレビ、ラジオ、新聞、雑誌など、多様なメディアでメンタルヘルスやコミュニケーションに関する情報発信を行う。働く人の心の健康に関する造詣が深く、産業分野でのカウンセラー、研修講師として十数年の実績をもつ。所有資格は公認心理師、精神保健福祉士(以上、国家資格)、産業カウンセラー。著書に『大人になっても思春期な女子たち』(青春出版社)、『働く私の「自分時間」』(明日香出版社)、『どうして会社に行くのが嫌なのか』(アスキー新書)など多数。
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