既存スタッフや採用したスタッフに定着してもらうために、企業は「どんなことを考えればいいのか」「何を準備をすればいいのか」などを解説します。(2023年4月27日)
まずは採用から着手する
自社の離職率を下げるために、まず着手してほしいことは『採用』です。『離職率』という言葉から、現在のスタッフが『辞めない』ことを重要視される方も多いと思います。もちろん、とても重要な要素ですが、実はそれ以上に重要なのが『採用』です。
なぜなら、採用基準で職場全体の離職率が良くも悪くも大きく変わるからです。あなたは何を基準に採用していますか? 経験者ですか? 即戦力ですか? もし、そのような点だけで採用の判断をされているのなら、かなり危険な状態です。

採用基準で一番重要なのは『方向性』です。知識や経験、実力や実績などよりも、まずは、『方向性』が合っているかどうか、ここで判断してください。反対に、方向性が合っていなければ、いくら仕事ができる人であっても採用してはいけません。そのような人は組織を壊しかねません。それどころか、組織内でもめ事を増やす温床となり、組織全体の離職率を上げてしまう要因にもなりかねません。
方向性が合わないと起こる大きな問題
仕事ができる人を基準に採用すると、何が問題なのでしょうか。それは「仕事ができる人ほど周りを巻き込む力が強く、反対派の派閥を生み出してしまう」ということです。仕事ができるということは、他の同僚への説得力も強いわけです。例えばお昼の休憩中の会話で「ここのやり方はおかしい!」などと熱弁をふるわれたときには、同調する社員が増えてしまうのです。
方向性が違っているのはその社員1人でも、仕事ができるがゆえ周りを巻き込み、他の社員の方向性も変えてしまいます。その結果、仲間を引き連れて反対運動を起こされてしまうことにもなりかねません。「少々方向性は合っていないけど、仕事はできそうだし採用しよう!」なんてことのないように注意しましょう。まずは「方向性」です。ここが合っていることを絶対条件にして採用しましょう。
目的地を伝える
面接では、応募してきた求職者への質問が大半になると思いますが、それだけでは「方向性」の合う人かどうかの判断はできません。そのため、面接時にこちらから方向性を伝える必要があります。
要するに「私たちはどこに行きたいのか、その先には何があるのか」を伝えるのです。いわゆる『目的地』です。それを共感してもらった上で、その人の特性が活かされるポジションを考えます。野球チームで例えるなら、目的地は『リーグ優勝』なのか『野球を楽しむ』なのか。それが伝われば、このチームに入りたいかどうか、はっきり見えてきます。ですから、そこに共感がない人は、いくら実力があってもチームに入れてはいけないのです。
●文/森崎のりまさ(もりさき のりまさ)
職場いきいきコンサルタント。22歳から介護業界で働き始め、約20年間、現場に携わる。介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得し、訪問介護管理者、老人ホーム施設長を経験。施設長を務めていたとき、一般的に離職率が高いといわれる介護施設で「2年間退職者ゼロ」を実現する。2021年、これまでの実績と経験を活かし、『仕事=楽しい』に変える職場いきいきコンサルタントとして独立。企業の社員研修や社員面談などを請け負い、職場の環境改善に尽力している。著書に『退職者を出さない管理者が必ずやっていること』(産学社)Amazonランキング人事部門1位。インターネットラジオ局『ゆめのたね放送局関西チャンネル』のラジオ番組『今日も明日もポジッピー』パーソナリティ。
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