ポジティブフィードバックはやる気を上げるコミュニケーション・スキルですが、実践することに抵抗のある方もいらっしゃるかもしれません。でも、人間は誰にでも承認欲求があります。「見ているよ」「認めているよ」のメッセージは、やる気の原動力となります。時間をとられずに実行でき、さまざまな効果があるポジティブフィードバックは、職場のリーダーにとって大切な仕事の1つと言えます。
誰でも承認されればうれしい!
あなたは下記のようなポジティブなフィードバックをもらったら、どう思いますか?
「今期も営業に貢献してくれてありがとう」
「残業、おつかれさま。ご家族との時間も大切にしてね」
「君は分析が得意だから、今度のレポートにもデータを多めに入れてくれる?」
仕事の結果だけでなく、自分の行為や存在、可能性について承認してもらってうれしくない人はいません。マズローの欲求段階説によると、人間には「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」という5つの欲求があります。これらの階層はピラミッド状になっており、低い階層の欲求が満たされることによって、次の段階の欲求を求めるようになります。日本では、多くの方が最初の3つの欲求を満たしていますが、4つ目の「承認欲求」はそれほどでもないのが現状です。誰もが承認されることを待っていると言えます。
ポジティブフィードバックの研修をさせていただくと、よく「ポジティブな言葉を伝えても、相手がうれしそうでないのですが」という質問をいただきます。多くの場合、相手はそのような肯定的な言葉を受けることに慣れていないため、どう反応したらよいのか分からないのです。たとえ相手が笑顔で「ありがとう」と言わなくても、「誰だって承認されたらうれしい」を覚えておいてください。
5つの効果
さて、ポジティブな言葉をかけられると、相手にとってどのような効果があるのでしょうか? 代表的な5つの効果を紹介します。
(1)うれしいと同時に、仕事に対するモチベーションが上がる
(2)自分に対する自己肯定感が上がり、自信へとつながる
(3)言葉をかけてくれた上司と部下間の、人間関係が向上する
(4)仕事のやり方が「肌感覚で」分かるようになる
(5)やる気や自信があり、関係性のできている部下は主体的に仕事に取り組むようになる
この5つの効果によって、チームの雰囲気が変わってくることを実感していただけるでしょう。ポジティブフィードバックは、意識していればほんの数秒で実践できます。一度で効果がある場合もありますが、定期的に行うことをおすすめします。
●文/ヴィランティ牧野祝子(まきの のりこ)
国際エグゼクティブコーチ、株式会社グローバル・キャリアデザイン代表
米コロンビア大卒、仏INSEAD(欧州経営大学院)MBA修了。イタリア・ミラノ在住。障害児を含む3児の母。20年間に渡り、国内外10カ国で米系戦略コンサルティングファーム、仏系化粧品会社、英系酒販会社、伊系アパレル企業でマーケティングや新規事業の立ち上げなど、さまざまなキャリアを積む。さまざまな仕事で培った経験やノウハウを活かし、国際エグゼクティブコーチとして独立。考え方や事情の異なる人たちが一緒に仕事をするには、個々のよさを引き出す環境を作ることが必要と考え、ポジティブフィードバックを活用したコーチング・スキルを伝える活動を行う。法人・個人を問わず、グループ面談やセミナーなどを年間2000セッション実施。著書に『国際エグゼクティブコーチが教える人、組織が劇的に変わるポジティブフィードバック』(あさ出版)。