イメージが伝わっていない
管理職の方や人事担当者は「あと1人採用が決まれば、職場は落ち着いてくる!」といったゴールイメージを持ちながら、採用活動をされていることと思います。私も管理職をしていたころ、人を採るときは「ここのポジションに1人、それとここに1人で安定するぞ!」といった感じで、明確なイメージを持っていました。
そのようにイメージを持つのはよいことですが、それをスタッフ一人ひとりに伝えているでしょうか。ご自身には当然のイメージかもしれませんが、案外そのイメージは伝わっていないものです。
日中の人手不足で、なぜ夜勤を採るの?
私が勤めていた老人ホームで実際にあった話です。24時間3交代制の勤務で、日中の人手が足りなくて求人募集をしていたとき、夜勤の応募がきました。私は「この人を採用すれば、現在夜勤に入っているスタッフを日中の勤務に変えることができるな」というイメージがわきました。しかし、既存のスタッフたちはそのように捉えていませんでした。「日中が人手不足なのに、なぜ夜勤を採用するの?」と不信に思う人がいたのです。
また、新人を採用しても一人前になるまでは付きっきりで教える必要があるため、既存スタッフの業務は一時的に増えます。そのため、状況が落ち着くのを待たずして「人が増えたのに忙しい」と早々に判断し、職場を去るスタッフが出ることもあります。
管理職とは違い、現場のスタッフは「今がどうなのか?」を見ています。夜勤スタッフが増えれば日中が落ち着いてくることや、新人が育つまでは一時的に業務が増えることも、イメージできていないことがほとんどです。今の状況がすぐに変わらなければ、これからも変わらないと判断します。それを解消するには、未来のイメージを明確に伝える必要があります。
例えるなら、真っ暗闇のトンネルの中にいるスタッフに対して「何メートル先に出口がある」「出口の先にはこんな素晴らしい世界がある」といったイメージを持たせて、今がつらくても出口に着くまでは仕事を続けてもらえるように働きかけていく必要があります。
せっかく新人を採用しても、既存スタッフがネガティブになり、職場の空気を悪くし、揚げ句の果てに退職されてしまったら元も子もありません。まずは、先の見えないスタッフの不安を払拭することが大切です。
●文/森崎のりまさ(もりさき のりまさ)
職場いきいきコンサルタント。22歳から介護業界で働き始め、約20年間、現場に携わる。介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得し、訪問介護管理者、老人ホーム施設長を経験。施設長を務めていたとき、一般的に離職率が高いといわれる介護施設で「2年間退職者ゼロ」を実現する。2021年、これまでの実績と経験を活かし、『仕事=楽しい』に変える職場いきいきコンサルタントとして独立。企業の社員研修や社員面談などを請け負い、職場の環境改善に尽力している。著書に『退職者を出さない管理者が必ずやっていること』(産学社)Amazonランキング人事部門1位。インターネットラジオ局『ゆめのたね放送局関西チャンネル』のラジオ番組『今日も明日もポジッピー』パーソナリティ。
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