パワハラにあった経験
パワハラ防止法が施行されて3年、中小企業においても義務化されて1年以上経過しました。ある調査(※1)によると、職場内で「ハラスメントが存在する」と回答した人の割合は4割以上で、高止まりの状態が続いています。
かつてのパワハラは殴る蹴るなど、あからさまに暴力をふるうようなケースが横行していました。今は、ネチネチと嫌味を言ったり、人格否定をしたり、仕事をさせなかったりなど、陰湿な行為をして精神的に追い詰めるパワハラが増えています。
実は筆者も、起業する前に数カ月だけ在籍していた会社でパワハラにあった経験があり、とても苦しい思いをしました。私の場合は9カ月で退職して、独立開業することになったのですが、そういう選択をすることができない方が多いでしょう。そうなるとストレスを抱え込み、うつ病を発症して休職や退職になるケースにつながってしまいます。
せっかく新規で採用し、育ててきた新人スタッフが、心無い管理職や既存の社員からのパワハラによって、辞めることになるのは避けなければなりません。
パワハラ上司の2タイプ
パワハラをする上司には2つのタイプが存在します。1つ目は普段のうっぷんを晴らすため、ストレス発散が目的で、標的を決めて攻撃を仕掛けるタイプです。パワハラだと分かっていながら、いじめたり、暴言を吐くなどの愚行を続ける確信犯ですので、その行為を見逃してはいけません。厳重注意をして、対象となるスタッフへの謝罪、自分の言動を反省させる必要があります。
2つ目は、自分の言動がパワハラの対象になると思っていないタイプです。部下が思ったように行動しなかったり、成果を上げられないことにいら立ちを感じて、気持ちが抑えられずに激高してしまうというケースです。自分では、悪いことをしているという意識がないので厄介です。
先に、筆者がパワハラにあったことをお伝えしましたが、お恥ずかしい話ですが、アパレル専門店チェーンでエリアマネージャーの職に就いていたとき、私自身がこのタイプのパワハラ上司でした。
当時の私のミッションであった『担当エリアの予算達成』に協力的でない部下の行動にいら立ちを感じ、「なんで売れないんだ!」などと言って、詰め寄っていたのです。対象となる部下のことを、「嫌い」とか「いじめてやろう」という気持ちは一切ありませんでした。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『人材マネジメント一問一答』(商業界)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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