既存スタッフや採用したスタッフに定着してもらうために、企業は「どんなことを考えればいいのか」「何を準備をすればいいのか」などを解説します。(2023年6月27日)
「辞めたい」をどう受け止めるか?
離職率の高い職場では、従業員が不平不満とともに「辞めたい」という言葉をよく口にしているものです。公の場では耳にすることがなかったとしても、管理職の知らないところでは同僚との会話で口癖のように言っています。では、その従業員は「数カ月後には辞めるのか?」というと、そんな従業員に限って案外いつまでも辞めなかったりします。ですが、そのような言動は、ほかの従業員を不安にさせ、職場環境を悪くする原因になります。
今回はこのような従業員と「どのように向き合っていくとよいのか?」をお伝えしていきます。「辞めたい」という言葉を耳にするシチュエーションは、大きく分けて2つあります。他者から聞く場合と、本人から聞く場合です。
他者から聞く場合
冒頭でお伝えしたとおり、同僚との会話で「辞めたい」と話していて、直接聞いた従業員が心配して管理職へ報告してくることがあります。これに関しては「そうなんですね」と話をしっかり聞きながらも、この段階では本人に直接アプローチしないことが大切です。
なぜなら、この「辞めたい」は本人の言葉とは限らないからです。実際には「辞めたい」と言っていない可能性があります。例えば、本人が「仕事が毎日つらい」「怒られて仕事が嫌になった」と話していたとしましょう。これを聞いた同僚が「辞めたいんだな」と勝手に解釈している場合があります。そのため、本人から直接聞くまでは事実と思い込まないことです。とはいえ、不平不満があるからこその結果であると考えられるため、普段から何かと気にかけるようにしましょう。
他者から聞いた場合は、決して本人に「辞めたいって聞いたけど」などと確認しないようにしてください。事実ではなかった場合「誰がそんなこと言ってたの?」「辞めたいなんて言ってません!」となり、組織の雰囲気を悪くする可能性があります。ですから、常に気にかけておいて「つらそうだな」と自分自身が感じたとき、確認するようにしてください。
本人から「辞めたい」と直接言われた場合
こちらの場合も、まずは「そうなんですね」と本人の辞めたい気持ちを受け止めることから始めます。辞めたくなった理由を聞き、受容します。「そんなことで辞めたいのか?」などと思うことがあるかもしれませんが、本人の気持ちを受容するわけですから「自分がどう思うか」は関係ありません。本人が「辞めたい気持ちになっている」ことは事実なのです。その部分を受容します。
管理者の立場として、従業員から「辞めたい」と言われることは大変つらいことでしょう。なかなか受容と言われても難しいかと思います。しかしポジティブにとらえれば、辞めたいと話すのは「辞めたくないから」でもあるのです。本当に辞めたかったら「何月に辞めます」とはっきり言います。そこを「辞めたい」にとどめているということは、今の辛い気持ちを「伝えたい」「分かってほしい」と思っているからです。
●文/森崎のりまさ(もりさき のりまさ)
職場いきいきコンサルタント。22歳から介護業界で働き始め、約20年間、現場に携わる。介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得し、訪問介護管理者、老人ホーム施設長を経験。施設長を務めていたとき、一般的に離職率が高いといわれる介護施設で「2年間退職者ゼロ」を実現する。2021年、これまでの実績と経験を活かし、『仕事=楽しい』に変える職場いきいきコンサルタントとして独立。企業の社員研修や社員面談などを請け負い、職場の環境改善に尽力している。著書に『退職者を出さない管理者が必ずやっていること』(産学社)Amazonランキング人事部門1位。インターネットラジオ局『ゆめのたね放送局関西チャンネル』のラジオ番組『今日も明日もポジッピー』パーソナリティ。
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