既存スタッフや採用したスタッフに定着してもらうために、企業は「どんなことを考えればいいのか」「何を準備をすればいいのか」などを解説します。(2023年7月27日)
ベテランが多い職場は安定?
ベテランの多い職場は、環境が安定しているイメージを持つ方も多いかと思います。しかし、実際にはベテランが多い職場であっても離職率が高い職場は存在します。「新入社員ばかりが、すぐに辞めてしまう職場」です。
新入社員ばかりが辞めるということは、ベテラン社員の離職率は低いわけです。ということは職場環境の問題ではなく、辞めてしまう新入社員の側に問題があるように感じるかもしれません。しかし、この状況だからこその問題点が潜んでおり、早急に着手しないといけない場合も考えられます。
その問題とは、ベテランが増えることによって新入社員への「これくらいはできて当然」の合格ラインが、意図せず引き上げられてしまっている場合です。これは、新店舗オープン時に新入社員ばかりだった時期から数年を経て、ベテランが大半を占めるようになった職場に陥りがちな問題です。ベテランもオープン当時は新入社員だったわけです。その頃はベテランもいなかったわけですから、できないことがあって当然だったのです。できないところは同僚同士で教え合って成長していたわけです。
そんな新入社員たちも月日と共に一人前になり、ベテランの域へと成長します。すると、いつの間にかベテランの自分たちにとっての「できて当然」が、一人前の合格ラインに変わり、結果的に新入社員には高すぎる基準になってしまうのです。
メンバーが長く勤めれば勤めるほどチームメンバーの『平均点』はどんどん上がります。その流れに合わせて、社員として一人前の『基準点』を上げてはいけません。長年働いていると、入社時の自分が「どれほどの点数だったか」を忘れてしまうこともあるでしょう。管理職の立場として、ベテラン社員に対し「あなたにもそんなときがあった」ということを思い出してもらえるような関わりを持ちながら、定期的に基準点の再認識をはかりましょう。
新入社員がすぐに辞めてしまう大きな理由
基準が本来の一人前よりも高くなると、一人前になるまで長い期間が必要になります。すると、長い期間「自分はみんなの足を引っ張っているのではないか?」と思うことになり、悩みながら働き続けることになります。上司や先輩から注意を受けるたびに自分を責め、同僚とも比較をしてしまい、モチベーションも人間関係も悪くなる一途をたどります。
新入社員は、自分のベストな居場所をすぐには見つけられないものです。そして、入社後しばらくは心が折れやすい時期でもあります。一番大切なことは、仕事で一人前になる以前に「私はここにいてもいい人なのだ」と実感してもらうことです。職場内で「自分の存在価値を感じることができるかどうか」が、新入社員の離職率に大きく影響するのです。
一人前に育てることばかりを意識して指導や注意ばかりをしていたら「新入社員の離職率が上がっていた」なんてことのないように関わっていきましょう。
●文/森崎のりまさ(もりさき のりまさ)
職場いきいきコンサルタント。22歳から介護業界で働き始め、約20年間、現場に携わる。介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得し、訪問介護管理者、老人ホーム施設長を経験。施設長を務めていたとき、一般的に離職率が高いといわれる介護施設で「2年間退職者ゼロ」を実現する。2021年、これまでの実績と経験を活かし、『仕事=楽しい』に変える職場いきいきコンサルタントとして独立。企業の社員研修や社員面談などを請け負い、職場の環境改善に尽力している。著書に『退職者を出さない管理者が必ずやっていること』(産学社)Amazonランキング人事部門1位。インターネットラジオ局『ゆめのたね放送局関西チャンネル』のラジオ番組『今日も明日もポジッピー』パーソナリティ。
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