既存スタッフや採用したスタッフに定着してもらうために、企業は「どんなことを考えればいいのか」「何を準備をすればいいのか」などを解説します。(2023年8月31日)
感謝を伝える
人事考課のように評価基準があり、各項目を数値で評価する場合は別として、日常的にスタッフを評価する際に心がけてほしいことがあります。それは、「評価を感謝で伝える」ということです。
評価は「上から目線で言われた」と受け止められやすく、相手からは「できていないクセに! あなたには言われたくない!」などと、その場で言葉には出さなくとも心の中で思われてしまう場合があります。相手のために伝えたつもりでも、評価で伝えたことによって信頼関係が崩れてしまうことがあるのです。
実際、私も老人ホーム施設長を務めていたころに、スタッフにできていることと、まだまだなところを気づくたびに伝えていました。すると、私の前で「はい」と返事をするのですが、私のいないところでは愚痴を言っていたようです。そして、つべこべ言われたくないスタッフは少しずつ私から離れていき、最終的にコミュニケーションが取りにくくなってしまいました。そのため、日常的に伝える場合は「評価」ではなく、「感謝」という視点で伝えましょう。
自分と他人の当たり前は違う
感謝とは何でしょうか? それは、やってくれたことに対するねぎらいです。「仕事は、やることが当たり前なのに、やってくれたことに感謝する必要があるのか?」と考える人がいるかもしれませんが、実は個々に思う「やって当たり前」は一致していないのです。
例えば、あなたは消耗品のストックが減っていることに気づき、補充したとしましょう。これは、あなただから気づくことができたのであって、他のスタッフだと数日たって気づいたり、あなたが補充したことすら気づかないなんてことが往々にしてあるのです。
個々の特性によって、自分にとっては当たり前と思う仕事でも、他者にとって当たり前ではないことがたくさんあります。自分にとって当たり前に感じることでも、やってくれたことで助かったのであれば、意識的に感謝の気持ちを伝えましょう。すると、相手にとって頑張った行動であった場合、「上司が私の頑張りに気づいてくれた! 分かってくれた!」となるわけです。
普段から評価ばかりしていると、相手は「いつも見られている」感覚を持ち、嫌がられてしまうかもしれません。しかし、感謝を伝えると「いつも見てくれている」感覚を持つので、モチベーションアップはもちろんのこと、信頼関係も築くことができます。
●文/森崎のりまさ(もりさき のりまさ)
職場いきいきコンサルタント。22歳から介護業界で働き始め、約20年間、現場に携わる。介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得し、訪問介護管理者、老人ホーム施設長を経験。施設長を務めていたとき、一般的に離職率が高いといわれる介護施設で「2年間退職者ゼロ」を実現する。2021年、これまでの実績と経験を活かし、『仕事=楽しい』に変える職場いきいきコンサルタントとして独立。企業の社員研修や社員面談などを請け負い、職場の環境改善に尽力している。著書に『退職者を出さない管理者が必ずやっていること』(産学社)Amazonランキング人事部門1位。インターネットラジオ局『ゆめのたね放送局関西チャンネル』のラジオ番組『今日も明日もポジッピー』パーソナリティ。
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