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入社して活躍できる人の見きわめ方/奥山典昭

第6回「どんな人を採用すべきか?」

自社に必要な人を採用するために、企業は「どんなことを考えればいいのか?」「どんな準備をすればいいのか?」などについて解説します。(2023年9月12日)

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希望や期待を高め過ぎる採用がキケンな理由

 採用は会社の未来を作っていくための重大なイベントです。そこに関わる人たちの心が期待に満ち溢れ、少しばかり浮かれ気味になってしまうのも無理はありません。しかし、そこで前のめりな気持ちを制御し、リスクマネジメントの意識を高めなくてはいけないのは、前回に述べたとおりです。期待を高め、「こんな人物を採用したい」という思いを強めて臨む採用が危険な理由は、2つあります。

 1つ目は、自分の中で「採るべき人」の人物像を固めて採用選考に臨むことで、応募者の行動を自分の都合の良いように解釈してしまう場面が増えるからです。自分が思い描く人物像と照らし合わせる視点で応募者の行動を追いかけると、非生産的な行動や実は問題のある行動までもが、自分の求める魅力的な行動に見えてしまったりするものです。限られた情報に反応して自分の好むストーリーを勝手に紡いでしまうことを論理誤差と言いますが、希望や期待の感情に支配され過ぎた採用選考は、論理誤差を招くリスクを高めます。





 2つ目に、このようなスタンスで応募者の行動を追いかけると、応募者の望ましくない行動に対する感性が高まりにくくなるという問題があります。「採ってはいけない人」は採用選考の場でも何らかの問題行動を見せますが、それらに対してしっかり違和感や嫌悪感を抱くことが、リスクマネジメントの前提となります。

 そのような行動には過剰さや不自然さが伴うことが多いのですが、自分が期待する行動を待ち望んでいる人の中では、「過剰」や「不自然」に反応する感性のスイッチが入りません。採用選考に臨む人の中で希望や期待が高まれば高まるほど、リスクの匂いを嗅ぐ感性が低下するのです。


徹底したリスクマネジメントの結果として逸材が浮かび上がる

 以上のような理由から、採用選考において応募者を正しく見極めようとするならば、応募者が見せるリスク含みの行動を静かな心で粛々と拾っていくスタイルが推奨されます。その結果、それらの行動とは無縁の「採るべき人」が浮かび上がります。

 無理や無駄のない行動に終始するその人からは、多分安定感と安心感が漂っていることでしょう。成熟した心を持つ人は、未知の場面でも自分の頭で考えて自分で動くことができる「逸材」であるはずです。そのような人物が出現してから期待と希望を膨らませても、決して遅くはありません。
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につづく


●文/奥山典昭(おくやま のりあき)
概念化能力開発研究所株式会社代表、組織再編支援コンサルタント、プロフェッショナルアセッサー
大学卒業後、商社での海外駐在、大手電機メーカー、人事系コンサルティング会社などを経て、1999年に概念化能力開発研究所株式会社を設立。人の能力や資質を数値化して客観的に適性を評価する人材アセスメントと、組織に必要な人物像を抽出する採用アセスメントを駆使し、企業の組織再編や採用活動を支援。現在、応募者の本質を見抜くノウハウを企業の経営者や採用担当者に伝える採用アセスメントの内製化支援に注力している。著書に『デキる部下だと期待したのになぜいつも裏切られるのか』(共著・ダイヤモンド社)、『間違いだらけの優秀な人材選び』(こう書房)、『採るべき人 採ってはいけない人』(秀和システム)、『採るべき人採ってはいけない人第2版』(秀和システム)
https://conceptual-labo.co.jp
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