愚痴、不満、批判、悪口など、ネガティブな発言をしている人が職場にいると、一気に空気がよどんでしまいます。特に、同僚や上司の悪口を陰で言いふらす人がいると、人間関係に亀裂が生じてしまいます。若手スタッフは特に敏感に反応します。厚生労働省の調査では、若年層の離職理由の約3割が「人間関係が良くなかったから」でした。
悪口を言っている人の周りには、何も思っていないのに「仲間外れにされたくない」と考えてしまい、無理をして「悪口に付き合っている」という人もいます。もちろん、ストレスを感じます。そういうことが頻繁にあると、会社に行くのが嫌になり、離職へとつながります。
私自身も、大学を卒業してすぐに入社した会社の初出勤の日に、先輩社員から上司の悪口を聞かされ、モチベーションが著しく低下した経験があります。「この会社に就職してよかったのだろうか?」と心配にもなりました。
なぜ、他人の悪口を言いふらす人が生まれるのか?
上司や同僚の悪口を言っている人は承認欲求が極端に強い人です。承認欲求とは「周りから価値ある存在と認められたい」という人間の根源的な欲求です。人の悪口を言うことで自分に注目が集まるのに加えて、共感してくれる人も出てくるので、それにより承認欲求を満たそうとしているのです。
また、悪口を言えば、一時的にはストレス発散にはなるけれど、その後、スッキリするかと言えばそうではなく、後味が悪い感覚が残るものです。精神科医の樺沢紫苑氏によれば、悪口を言うことで、ドーパミンが脳内に分泌されるので、楽しい気分になるが、それと同時にコルチゾールというストレスホルモンが分泌されるので、ストレスを感じるとのことです。
リーダーが悪口を言っていませんか?
私は研修の場で、「スタッフは上司、経営者の鏡」と伝えています。スタッフは上司の言動をよく見聞きしています。目の前にいないスタッフについて「Aさんは仕事が遅いからな〜」とつぶやいたり、取引先の担当者に対する文句を言ったり、店舗であればお客さまのことを「さっきの客は最低だ!」などと悪口を言っていたとしたら、スタッフはそれをまねて同じように悪口を言うようになります。
組織内の空気は上司、経営者が作り出していると言って過言なしです。自分が悪口を言いそうになった場合は、職場ではぐっとこらえてプライベートの場で何でも話せる間柄の人に、短めに伝えるようにしてください。そして、話し終えたらそのことは封印します。そういう人がいなければ紙に書き出して、その後は用紙をシュレッダーに掛けて粉砕してしまいましょう。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『人材マネジメント一問一答』(商業界)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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