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社長にインタビュー!わが社の人材育成

第12回 OHANA 代表 岩上巧さん/1人年平均18万円、年30回利用する美容室〜価値を共有できる人材の作り方〜

1000円カットどころか、さらなる低価格店も出現するなど、価格競争の激化は、美容業界も例外ではない。そんななか、客一人当たりの年間消費金額が18万円という美容室が、茨城県水戸市にある。なぜ、そんなことが可能なのか。人どおりが多いとは決して言えない、同社『Mahaloco(マハロコ)店』で、代表の岩上巧さんに、うかがった(取材・写真・文 アイデム人と仕事研究所 所長 平田未緒)。

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1人9万円、6カ月有効のパスポート
 
  「決して高級サロンではありませんが、うちで髪型をお任せいただくと、一回あたり2万8000円〜4万8000円程度です」

 こう話すのは、茨城県水戸市で美容室2軒を営む、OHANA代表の岩上巧さん(写真)。 
 
 1971年、父と母が「路地裏に夫婦二人きりで開業した『まこと美容室』」の2代目だ。
 美容師として東京で働くも、退職を余儀なくされ、妻子を連れて水戸に帰郷。その後「まこと美容室」の経営を引き継ぎ、1999年には店名を、「maCoto Hair」に変更した。

 2008年4月には、2店目となる『MAHALOCO』を出店。ちなみに価格は、たとえばカットが、美容師により4200円〜6300円という設定だ。

 安くはないが、目が飛び出る価格ということもない。にもかかわらず、客単価が2万円に届くのは、カットだけでなく「カラーデザイン(カラーリング)」「エアウェーブ」「ヘッドスパ」など、オプショナルメニューも依頼するお客が多いから。

加えて、もう一つ。客単価向上に「サロンバケーションクラブ」の存在が大きい。

 岩上さんは説明する。

 「『サロンバケーションクラブ』とは、遊園地でアトラクションが乗り放題になる、パスポートチケットのようなものです。例えば、カット・前髪カット・カラー・パーマ・ストレート・ヘアエステが、期間中何度でもOKの『ゴールドパスポート』が、6カ月で9万円といった具合です。このシステムに、『毎回払うより安くつくから』『どうせいつもお任せしているし』といって、ご参加くださるお客さまが多いんです」

 サービスを受け放題とはいえ、実際には多くても月に2〜3回程度の来店となる。お客さま一人ひとりに担当のデザイナーがつき、ライフスタイルを把握した上で次回の髪型やホームケアの方法などを提案。そのうえで、次回来店日時を案内する、システムであるからだ。


経営理念は「アロハスピリッツ」

 日銭が入るどころか、お客さまからの料金前払い。なぜ、こんなことが可能なのか。
 
 理由は、同店が、「髪を切るところ」「パーマをかけてもらうところ」ではないからだ。

 「私の母親世代は、美容室のことを『美容院』と言い、『美容サロン』という言葉もありました。病院や大学院など『院』は何かをじっくり治したり、育てる場所を意味します。サロンは、サービスを受ける場所を意味します。かつ、ヨーロッパでは、知的社交場のことを意味しました。現在、ほとんどの美容室は、“事前にお客様にヘアカタログから好みの髪型を選んでもらい、『これと同じ』髪型を、言われたとおりに作ります。また、1000円カットなど『髪を切る』という行為そのもののみをサービス化し、換金化する“ヘア・ショップ”が全盛です。うちは、そうではありません」と岩上さん。

 第一に、「このお客さまはなぜ髪を整えようと思ったのか」、無意識の意識に着目する。その後、同店オリジナルの“タイムラインシート”を使って、相談に入っていく。その際、担当者は、お客さまの関心ごとやライフスタイルを把握した上で、ヘアデザインを提案していくという。

 店のコンセプトは、ハワイ。しかし、単に「インテリアをそれっぽくする」といった表面的なものではない。大切なのは「アロハスピリッツ」。これが、実は「maCoto Hair」の経営理念でもある。


スタッフと理念を共有、お客さまとは価値を共有

 「私どもは、一人のお客さまと仕事を通じて、生涯お付き合いしていきたいと思っています。そのために大事にしているのが、その方の人生観に寄り添い、髪型で心のケアをすることです。『楽しい』とか『ニーズを追っている』だけで、生涯のお付き合いをするのは不可能です」
 
 例えば髪型は、「就職するときの心意気」を表現したい場合もあれば、「突然の不幸」のためサロンを訪れるときもある。つまり、同じお客さまでも、その時々で、来店動機が違うのだ。

 こうした、お客様1人ひとりの微細な心の状態や持ちように添うというのは、極めて高度な「つながり」のコミュニケーション。この実現のため、重要な役割を果たしているのが「アロハスピリッツ」なのだと、岩上さんは説明する。

 「つながりを『ハワイ』に乗せて、お客さまに伝えているといった方が近いと思います。例えば現地の日常的なあいさつ用語『ALOHA(アロハ)』は、愛や感謝、共感といった意味に加え、アルファベット一文字一文字に思いやり、調和、喜び、謙虚さ、忍耐といった価値観が込められた言葉ですが、そうした抽象的な概念も、多くの人が、何度もリピートして行きたくなるハワイにひもづけることで、ぐっと共感が進むという感じでしょうか」

 実は岩上さんは、経営を引き継いで以降、14年間、求人媒体等を使ってスタッフを「募集」したことがない。
 
 「来店くださるお客さまご自身や、そのご紹介だけで、十分なんです。担当のスタッフと話をするなかで、スタッフにあこがれて、希望される方が多いようです」

 理念の共有・共感は、こんなところでも力を発揮する。


美容室を「貸切」でウェディング!
 
 お客さまは、髪を整えに来店する。しかしそこでは、美容はもちろん、人間関係の悩み、生き方や、解決したい問題など、あらゆることが話題に上る。美容師は、それらすべての聴き役となり、時にアドバイスをしたり、美容を通じた心のケアで、受け止め、解決していく役割を担うのだ。

 つまり、ここで提供されているのは、単なるカットやパーマではない、まったく異なる価値となる。これを1回2万円、あるいは半年に9万円を先払いして、求める人が、同社の顧客。だから、競合することはなく、価格競争にも巻き込まれない。

 実は、そんな状況が、同店のプライスリストに表れている。

 「サロンウェディング1時間5万2500円〜」。この文字がごく平然と並ぶのは、お客さまから「結婚するから、私のことを一番よく知っている『maCoto Hair』さんにヘア・アレンジやメイクをお願いしたい」と相談されるのはもちろん、「人や心を大事にする『maCoto Hair』さんに、結婚式全体のプロデュースをお願したい」「できれば、普段カットしてもらっているこのサロンで、結婚式を挙げたい」と、普通に相談があるからだ。

「店の隅に、バーコーナーがあるでしょう? ケータリングをお願いして、あそこでドリンクを作ってお出しします。単なる場所貸しではなく、アロハスピリッツに基づく、温かなおもてなし全体を、お引き受けするイメージです」

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所在地/茨城県水戸市城南2−10−9
創業/1971年
従業員数/正社員17人
資本金/300万円
年商/1億円(2012年5月期)
ホームページ/ http://www.ohana-world.net/main.html

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