既存スタッフや採用したスタッフに定着してもらうために、企業は「どんなことを考えればいいのか」「何を準備をすればいいのか」などを解説します。(2023年12月19日)
愚痴にはアドバイスをしない
スタッフから愚痴を聞かされることはありますか?
スタッフの愚痴を聞くことは管理職として、とても大切なことではありますが、聞き方を間違えるとチームワークが乱れる原因にもなります。そのため、相手の話を何も意識せずなんとなく聞くのではなく、意識して聞く姿勢が必要です。
管理職としての鉄則は『愚痴にはアドバイスをしない』ことです。愚痴は相手に「聞いてほしい」「分かってほしい」から話しています。『聞いてほしい』には『傾聴』し、『分かってほしい』には『受容・共感』します。そこで、「何かよいアドバイスをしなければ!」と思い、相手の話に自分の考えなどを返してしまうと結果的に「聞いてくれていない」と感じられてしまいます。
愚痴に対して自分なりの意見やアドバイスを言う必要はありません。そもそも愚痴に対して、答えを探す必要なんてないのです。
同調は信頼を失う
以前、私が老人ホームの施設長を務めていた際に、スタッフのAさんからはBさんの愚痴、BさんからはAさんの愚痴を聞かされたことがありました。
私はスタッフの「あのとき、〇〇さんから○○と言われてムカついた!」などといった愚痴に対して、両者のどちらに対しても「それはひどい!〇○さんって最低だね!」などと、相手と同じような感情を抱いて話していました。
相手のことを思って話していたつもりだったのですが、これでは他者から見ればスタッフと一緒になって愚痴を言っている人にしか見えません。それどころか、どちらにも話を合わせる『芯のない人』に見えていたことでしょう。
それによって、スタッフからの信頼が大きく崩れてしまいました。スタッフの愚痴の聞き役に徹していたつもりが、組織全体のチームワークを乱していたのです。
私はスタッフの話に『共感』しているつもりでした。しかし、それは『同調』でしかなかったのです。当時は『共感』も『同調』も違いを理解していませんでした。
共感とは『相手の気持ちを理解して寄り添いながら、自分の感じていることを示す』ことを意味します。一方で、同調とは『相手の意見や主張に対し、自分の考えが反対であっても言動を合わせること』を意味します。
よく似ているように思いますが、『気持ちに寄りそう』と『言動を合わせる』とでは、意味が大きく異なります。共感であれば、相手の気持ちに寄りそっているだけなので相手の気持ちを認めていることになりますが、そこに自分の意見や主張はありません。しかし、同調の場合は、相手の気持ちによって自分の意見を相手の主張に合わせています。
この違いによって、スタッフとの信頼関係が大きく変わるのです。
●文/森崎のりまさ(もりさき のりまさ)
職場いきいきコンサルタント。22歳から介護業界で働き始め、約20年間、現場に携わる。介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得し、訪問介護管理者、老人ホーム施設長を経験。施設長を務めていたとき、一般的に離職率が高いといわれる介護施設で「2年間退職者ゼロ」を実現する。2021年、これまでの実績と経験を活かし、『仕事=楽しい』に変える職場いきいきコンサルタントとして独立。企業の社員研修や社員面談などを請け負い、職場の環境改善に尽力している。著書に『退職者を出さない管理者が必ずやっていること』(産学社)Amazonランキング人事部門1位。インターネットラジオ局『ゆめのたね放送局関西チャンネル』のラジオ番組『今日も明日もポジッピー』パーソナリティ。
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