「前任の方が良かった」の声は必ず上がる
管理職やリーダーなどのスタッフをまとめる立場の人が、人事異動や退職によって代わることがあるかと思います。その際によく起こるのが、現場スタッフから上がる「前任の方が良かった」という声です。自分が後任であれば「本当に私で良いのだろうか…」と自信をなくすこともあるでしょう。前任や人事担当の立場であれば、心を痛め、後悔することもあるでしょう。
そして、この声によってスタッフの離職率が上がったり、後任管理職への不信感がつのったりすることもあります。ここで誤解しないでいただきたいのは、「前任の方が優れている」からこの声が上がっているわけではない、ということです。
私の経験では、前任や後任の『仕事ができるか、できないか』の問題とは関係なく、一度は声が上がります。なぜこのようなことが起きるのか、理由は大きく3つあります。
声が上がる3つの理由
1つ目は『経験年数にハンデがあるため』です。前任は就任から現在まで管理職を務めていたわけですが、後任管理職はまだ管理職になりたての状態です。たとえ、後任に過去管理職の経験があったとしても、こちらの現場での経験は初めてなのです。学生でいうところの小学6年生と小学1年生を比較しているようなものです。物の置き場所1つでも右往左往するのです。このように、後任にはスタートの時点からハンデがあるのです。
2つ目は『前任の良い部分とだけ比較されているため』です。スタッフにとって、前任の方が良かった部分もあれば、悪かった部分もあるかと思います。しかし、後任に変わったことによって、良くなった部分に対しては気になる部分ではないので、声が上がりにくい傾向にあります。その反対に、悪くなった部分に対しては放ってはおけず気になるため、スタッフ間の声としては、どうしても悪い評価の声が上がりやすいのです。
3つ目は『変化することに不安があるため』です。これは、人事に限ったことではなく、新しくルールや制度の変更をする場合でもよく起きます。スタッフのためにできたルールや制度であっても触ったことのないシステムやチェックリストなどを使うのであれば、慣れるまでの間はとても不安なのです。それが反対意見となって、新しいことに対しては何でも拒絶するようになります。
管理職が代わることに関しても同じように「これからどうなるのか?」「うまく関わっていけるのか?」と不安に思い、後任管理職に拒絶反応を起こすスタッフが現れるのです。
●文/森崎のりまさ(もりさき のりまさ)
職場いきいきコンサルタント。22歳から介護業界で働き始め、約20年間、現場に携わる。介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得し、訪問介護管理者、老人ホーム施設長を経験。施設長を務めていたとき、一般的に離職率が高いといわれる介護施設で「2年間退職者ゼロ」を実現する。2021年、これまでの実績と経験を活かし、『仕事=楽しい』に変える職場いきいきコンサルタントとして独立。企業の社員研修や社員面談などを請け負い、職場の環境改善に尽力している。著書に『退職者を出さない管理者が必ずやっていること』(産学社)Amazonランキング人事部門1位。インターネットラジオ局『ゆめのたね放送局関西チャンネル』のラジオ番組『今日も明日もポジッピー』パーソナリティ。
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