採用活動は、採用して終了ではありません。すぐに辞められてしまったら意味がないからです。定着・戦力化までを見据えた採用活動について考察します。(2024年2月20日)
本当の退職理由は?
会社を辞めるとき、多くの人が本当の退職理由を伝えていないのではないでしょうか。本当のことを言わないのは、「理解してもらえない」「波風を立てずに辞めたい」あるいは「引き留められたくない」という気持ちがあることなどが想像できます。
2017年の『子供・若者の意識に関する調査』(内閣府)※1によると、最初の就職先を離職した理由の最多は「仕事が自分に合わなかったため」43.4%、次いで「人間関係がよくなかったため」23.7%、「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」23.4%となっています。
●最初の就職先を離職した理由上位3(2017子供・若者の意識に関する調査)
「仕事が自分に合わなかったため」43.4%
「人間関係がよくなかったため」23.7%
「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」23.4%
※1:若者の就労などに関する意識を把握し、各種施策の企画立案に資するために16〜29歳以下を対象に実施
2022年の『雇用動向調査』(厚生労働省)※2で転職入職者が前職を辞めた理由をみると、男性は「その他の個人的理由」「定年・契約期間の満了」「その他の理由(出向等を含む)」、女性は「その他の個人的理由」「定年・契約期間の満了」「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が上位となっています。
●転職入職者が前職を辞めた理由上位5(2022雇用動向調査)
<男性>
「その他の個人的理由」19.6%
「定年・契約期間の満了」15.2%
「その他の理由(出向等を含む)」14.7%
「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」9.1%
「職場の人間関係が好ましくなかった」8.3%
<女性>
「その他の個人的理由」25.0%
「定年・契約期間の満了」10.9%
「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」10.8%
「職場の人間関係が好ましくなかった」10.4%
「その他の理由(出向等を含む)」8.6%
※2:主要産業の入職者数・離職者数、入職者・離職者の状況を明らかにすることを目的に年2回実施
どういうときに辞めたくなるか?
離職理由の調査結果を紹介しましたが、プライベートの理由や会社都合を除いた離職理由は労働条件、人間関係、仕事内容のいずれかの不満に起因していると考えられます。それぞれの理由について、辞めたくなる状況や心情を具体的に挙げてみます。
●労働条件
入社前に聞いていた説明と違う、残業が多い、休みが取れない、給料が仕事に見合っていない、評価に疑問を感じる、異動を命じられた…など
●人間関係
上司が高圧的な態度をとる、同僚や先輩から支援を受けられない、職場の雰囲気が悪い、社員同士がいがみあっている…など
●仕事内容
ノルマや責任が重い、やりがいを感じられない、学ぶ機会がない、自分の知識や経験を活かせない…など
離職につながる状況や心情を挙げてみましたが、実際に離職に至る原因は1つではないのではないでしょうか。例えば、「入社前に聞いていた説明と違う」と感じても、そのことを会社に相談できれば状況は変わるでしょう。また、評価に疑問を感じている人がいたら、その評価になったことを客観的に説明したり、「そもそも基準は明確になっているか?」「評価の仕組みは公正に運用されているか?」などを確認して対応することで、疑問の解消つながるかもしれません。
職場で悩みや疑問を相談できないと、従業員はますます不満を募らせ、不満の連鎖を招くことになります。その連鎖が離職につながっていくのではないでしょうか。
●文/三宅航太
2004年、株式会社アイデム入社。東日本事業本部データリサーチチーム所属。同社がWebサイトで発信する「人の戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務に従事する。さまざまな記事の作成や数多くの企業を取材。