非正規雇用のスタッフの比率は、産業全体で約4割の状況が続いています。とくに、飲食、小売業ではその比率は高く、彼、彼女たちの力を借りずして、現場を運営することはできません。
しかしながら、私のセミナーや研修の参加者からは、「パート・アルバイトスタッフに、どこまで仕事を任せればよいのか分からず困っている」という相談を受ける機会が多々あります。非正規雇用のスタッフに「責任を伴う仕事を振っても良いのかどうか」の判断を付けられないがゆえ、パート、アルバイトスタッフは、誰でもできるような簡単な業務、単純作業しか任せられていないケースが多いのです。
そういう環境で働いているとスタッフは、「自分はパート(アルバイト)だから、与えられた仕事をそつなくこなすだけで良いと思うようになり、消極的な働き方しかしなくなります。中には、ポテンシャルの高い人材もいるでしょうが、能力を発揮できないまま、シフト時間内に言われたことをこなすだけという日々を送ることになってしまいます。それが続けば、仕事に面白みを感じられないので、モチベーションが続かずに早期に辞めてしまうでしょう。
非正規スタッフが店舗運営の要
職場の半数近いスタッフが「パート、アルバイトだから、責任のある仕事はしたくない」と思い、仕事に線引きをしてしまうと、現場がうまく回らなくなります。
先日、私が知る店舗を訪れた際、正社員が忙しく業務をこなしている傍らで、アルバイトスタッフが、ボーッとしていたり、数人のスタッフが固まっておしゃべりに夢中になっていたりしていました。その際、アルバイトスタッフの1人に、「なぜ、正社員の仕事を手伝わないのか?」と質問したら、「指示されていないから」だと答えました。これが、仕事に線引きをするスタッフの典型的な例です。
正社員とパート、アルバイトでは、仕事の結果に対する責任は異なりますが、就業時間中はしっかり仕事をしなければならないという意味での責任は同じです。マネジメントを行う側の関わり方によって、パート、アルバイトスタッフは、仕事に対しての取り組み方が大きく変わります。
私がかつて経営していたセブンイレブンのフランチャイズ店では、すべての業務をパート、アルバイトに任せていました。接客はもちろんのこと、発注、売り場作りまで、責任を伴う重要な業務の9割以上を彼、彼女たちに任せて、店を運営していました。これは、私の店だけではなく、チェーン全体 (2024年2月現在21,000店以上)で同じように、非正規スタッフが店舗運営の要になっています。セブンイレブンは、言わずと知れた小売業界NO.1企業です。その9割の売上は、彼、彼女たちによって作られていると言っても過言なしです。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『人材マネジメント一問一答』(商業界)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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