人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2024年3月21日)
部下から信頼を勝ち取るためのシンプルで効果的な方法
ある官公庁の女性職員の方(まだ20代後半のいわゆるキャリア組の優秀な方です)からこんな相談がありました。
「去年からある部署のリーダー的な立場になり、マネジメントを任されるようになりました。部下の人たちは自分よりも経験豊かな年上の方ばかりです。自分の年齢的なものもあって、部下の方からナメられてしまっているような気がしてなりません。どうすれば、信頼される存在、一目置かれるような上司になれるでしょうか?」
確かに、目の前の女性は、いわゆる童顔で、こういう人が、例えば40歳代の男性部下を従えていくのも大変だろうなという気はしました。
ひと言で答えるには難しい質問ではあるのですが、「効果的な方法はあります。しかも、それには特別なスキルも知識も経験も必要なく、今すぐにやろうと思えば誰にでもできるシンプルな内容です」
そう言うと、彼女は目を輝かせながら、身を乗り出してきました。しかし、それから私のお伝えした内容があまりにも普通のことだったので、すぐにガッカリした表情に変わりました。
今までも、新任管理職研修などで「部下から一目置かれるにはどうすればいいか?」という質問に対しては、この方法をお伝えしてきました。彼女と同じように、関心を持った後、落胆した受講者の人たちに、過去の事例などを説明し、「まあ、だまされたと思って、やってみてください。1カ月続いたら、部下からのあなたを見る目が徐々に変わってきますから」と言うと、その中から必ず何人かはチャレンジしてくれます。
そして、2、3カ月すると、実行してくれた方から「効果がありました! 田中さんの言っていることがよく分かりました。間違いのない方法だと思います」と、メールが来たりします。実際にこの方法を実践した人は、例外なくその効果を実感してくれるのです。
なんだかもったいぶっているように思われるので、その「誰にでもすぐに実行できて、最も効果のある方法」について話を進めることにしましょう。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。