既存スタッフや採用したスタッフに定着してもらうために、企業は「どんなことを考えればいいのか」「何を準備をすればいいのか」などを解説します。(2024年3月26日)
求職者のニーズは多様化している
求人採用をする際、どうにか応募者数を増やそうと給与などの待遇を良くする企業がありますが、それは必ずしも得策とはいえません。最近は『多様性の時代』とよく言われるようになりました。一昔前までは仕事に求めるものが給与であったり、休日の数であったりと、ある程度は共通していたのですが、現在は違います。
世代や文化、国籍など、現在はいろいろな方が仕事を探しています。勤務先に求めるものは、求職者によって異なります。そのため、給与を上げたり、待遇を良くしても応募が増えるとは限りません。それならばと、多種多様なニーズに応えて何でもかんでも好待遇にしていくのも問題です。経費や労力が必要なため、会社が疲弊してしまいます。
仕事に「楽しい」を増やす
労働条件や待遇ではなく、求職者に興味を示してもらうにはどうしたらいいのでしょうか?
効果的な施策の1つが、仕事に「楽しい」を増やしていくことです。でも、楽しいと思うことは人それぞれです。人によっては面倒くさいと思う単純な作業でも、そんな作業を楽しいと思う人もいます。
例えば、マラソンやバーベキューを考えてみてください。数時間も走り続けるマラソンは、誰もが楽しいと思うでしょうか? 準備から片付けまでを自分たちでやるバーベキューは、誰もが楽しいでしょうか? 実際、楽しさが理解できない人もいるでしょう。しかし、それを楽しいと思う人もいます。楽しいと思う人がいるから、マラソンもバーベキューも存在するのです。
これは仕事も同じです。どんな仕事もスタッフへ均等に振り分けるのではなく、その人それぞれの特性や興味のあること、好きなことに合わせてバランスを取るのです。そうすることで、一人ひとりの多様性に合わせた「楽しい」が生まれます。
自分の思う「楽しい」を、スタッフに押しつけてもいけません。自分の楽しいと思うことが、他のスタッフにとって楽しいこととは限りません。「人それぞれの楽しいがある」と考え、勝手に決めつけることなく、スタッフと個別で対話をしながら常に客観的な姿勢で考えましょう。
スタッフ各々にとって楽しいことが増えていくと、求人広告を出さずとも良い口コミが広がります。スタッフの思う「楽しい」が、近隣の友だちやSNSなどを通じて伝わっていくのです。最近はSNSで悪評が拡散され、炎上するイメージが多いかもしれませんが、良い印象の拡散もあります。
自社のホームページとは異なり、スタッフの口コミはリアルな情報として捉えられます。また、「楽しい」という感情は抽象的であるため、誰にでも受け取ってもらいやすいのが特長です。「あの人が楽しいと言うなら間違いないだろう」と思われ、「どのように楽しいのか?」よりも「誰が楽しいと言っているのか?」で興味を示してもらえます。
●文/森崎のりまさ(もりさき のりまさ)
職場いきいきコンサルタント。22歳から介護業界で働き始め、約20年間、現場に携わる。介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得し、訪問介護管理者、老人ホーム施設長を経験。施設長を務めていたとき、一般的に離職率が高いといわれる介護施設で「2年間退職者ゼロ」を実現する。2021年、これまでの実績と経験を活かし、『仕事=楽しい』に変える職場いきいきコンサルタントとして独立。企業の社員研修や社員面談などを請け負い、職場の環境改善に尽力している。著書に『退職者を出さない管理者が必ずやっていること』(産学社)Amazonランキング人事部門1位。インターネットラジオ局『ゆめのたね放送局関西チャンネル』のラジオ番組『今日も明日もポジッピー』パーソナリティ。
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