失敗できない文章での返信
昨今、メールやチャットでクレーム対応をする機会がとても増えています。顔の見えない状態は電話対応と同じですが、対話ができるわけではありません。しっかりとした間違いのない返信文を送ることが重要になってきます。
メールやチャットでのクレーム対応で最も気をつけていただきたいのは、文章が事務的で、不親切な内容にならないようにすることです。こちらは丁寧な表現を使っているつもりでも、相手からは「冷たい感じ」「気持ちがこもっていない」と悪い印象を与えてしまう場合が本当によくあります。的確な返信文を作成しないと、お客様をさらに怒らせてしまう可能性があります。
声に出して読んでみる
では、どうすればよいのでしょうか。おすすめなのは、お客様に送る返信文をパソコンやタブレットの画面上で黙読するだけではなく、紙に出力して声に出して読むことです。黙読していたときには丁寧な表現で作成できたと思っても、音読すると「事務的で不親切かも…」ということに自分で気づくことも少なくありません。特に、自分たちが言いたいことばかりを伝えているなど、相手の気持ちに寄り添うような表現が1つもないということに気づけるようになります。
また、同僚や上司など、自分以外の人に返信文を読んでもらうとよいでしょう。「こういう表現を入れたらさらに誠意が伝わる」などのアドバイスを受けることができます。思わぬ誤字・脱字の指摘が見つかることもあるのでぜひ、周囲の協力を得るようにしてください。
早く終わらせたいと考えて急いで返信することよりも、お客様に悪い印象を与えない内容をしっかり作成することを重視しましょう。
理解不能なクレームメールへの対応
メール対応で最も大切なのが、お客様が書かれた文面の内容を読み解く力です。文章を読んで「一体何があったのか?」「私たちに何を求めているのだろうか?」といったことをくみ取って、返信する必要があります。ただ、残念ながら何度読んでも理解できないメールが送られてくるケースもあります。その場合は、想像力を働かせて返信文を送ることよりも、電話対応に切り替えるようにしてください。
●文/谷厚志(たに あつし)
“怒りを笑いに変える”クレーム・コンサルタント。一般社団法人日本クレーム対応協会の代表理事。
学生時代より関西を拠点にタレントとして活動。芸能界を引退後、会社員としてコールセンターやお客さま相談室のクレーム対応責任者を歴任。2,000件以上のクレーム対応に接し、クレーム客をファンに変える独自の対話術を確立する。2011年、クレーム対応のコンサルティング会社を立ち上げて独立。圧倒的な経験知と人を元気にするトークが口コミで広がり、年間200本以上の講演・研修に登壇する。著書に『損する言い方 得する言い方』(日本実業出版社)、『失敗しない! クレーム対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ピンチをチャンスに変えるクレーム対応術』(近代セールス社)など。フジテレビ「ホンマでっか?TV」、日本テレビ「ZIP!」など、メディア出演多数。
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