【第15回】断られたときに有効な「間接アプローチ戦略」
商談や接客時など、ビジネスシーンに応用できる心理学の知識を解説します。
間接アプローチとは?
間接アプローチ戦略は戦争用語の1つです。国家戦略において、相手国と正面から武力衝突するのではなく、間接的な手段として同盟国への支援や、シーパワーを駆使した経済封鎖・通商破壊などの間接的な手段を用いて弱体化させ、政治目的を達成しようとする戦略のことを言います。
簡単に言えば、直接ぶつかるのではなく、間接的にアプローチすることです。
・解説
ダメ営業マン時代のことです。昔の上司によく言われたことがあります。それは「見積書を出したお客さまは家の基礎が打たれるまで諦めるな!」ということです。私はその言葉を長年信じていました。ですから、基礎が打たれるまでとは言いませんが、未練がましく粘っていたものでした。
お客さまはさまざまな会社を検討して、悩んだあげく決断します。良くしてくれた営業マンにお断りの電話を入れるのは心苦しいものです。
しかし当時の私はそんなことは関係ありません。1回の電話で断られたくらいで、諦める訳にはいかなかったのです。私は断られてからも、もう一度検討していただけるように何度も頼み込んでいました。
でも、逆効果でした。お客さまを困らせた上、他社で決めた理由をより強固にしただけだったのです。
私が買う立場になったときのことです。3社に見積を出していただいたのですが、2社はお断りしなくてはなりません。1社の営業マンはすんなり受け入れてくれましたが、もう1社の営業マンはしつこく食い下がってきました。
お客さまの立場になって初めて、《断るのは精神的な負担になる》と痛感しました。
断りは素直に受け入れた方がいいという話をしてきましたが、すぐに諦めろと言っている訳ではありません。どんなに意志の固いお客さまでも、決めた直後は心が揺れ動くものです。
断られたときこそ直接アプローチするのではなく、間接的に手紙でアプローチしてみるのです。
他社で契約を決めた直後にこのような手紙が届いたらどうでしょうか?
【契約後は○○についてお困りになることもあるかもしれません。そのときはぜひ私にご相談ください】
このような手紙をもしいただいたら、私はグラッときたでしょう。私の経験上、断られた直後に直接アプローチしてもあまりいい結果にはつながりません。《少し離れたところからソッと気遣う》という感じがいいのです。
菊原智明●営業コンサルタント。大学卒業後、大手住宅メーカーに入社し、営業部に配属。「口ベタ」「あがり症」に悩み、7年間、苦しい営業マン時代を過ごす。その後、それまでの営業活動の間違いに気づいてやり方を大きく変えたところ、成績がみるみる上がり4年連続トップ営業マンに。自分と同じように営業に悩んでいる人たちをサポートしたいとの思いから、2006年に独立。著者に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(明日香出版社)、『面接ではウソをつけ』(星海社新書)など多数。
http://www.tuki1.net/
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