個人的な意見を求められた場合
クレーム対応では、お客様が「自分がどれだけ被害を受けたか」「どんな嫌な気持ちにさせられたか」を「分かってほしい」という気持ちが強ければ強いほど、感情的になり、大きな声でクレームを伝えてくることがあります。
中には「あなただったら、どう思いますか?」「私と同じ気持ちになりますよね」と、個人的な同調や賛成を求めてくる人もいます。このとき、「はい、私も同じ気持ちです」とか「私もお客様と同じことを考えると思います」とか、個人的な見解をお客様に伝えてしまう対応者がいます。
このような言葉を伝えてしまうと、お客様は「全て受け入れてくれた」と考えるようになり、「じゃあ、どう対応してくれますか?」「当然、返金してくれますよね。上の方にもそう言ってください」と、過大で理不尽な要求を求めてくることにもなりかねません。こうなると、切り返すことがとても困難になります。
お詫びと共感で対応する
もし、お客様から個人的な意見を問われたら「私共としてもお役に立てず、心苦しい限りです」あるいは「いかにお怒りであるか、お話を聴いてよく理解できました」という言葉を返し、お詫びと共感で対応するようにしましょう。クレームを対応するのは1人の担当者かもしれませんが、個人ではなく会社の代表として対応しています。「私」ではなく「私共」という言葉も使うようにしてください。
会社の代表としての意識がなく、個人としての意見で対応をしてしまうと、別の人が対応したときに「この間の人は“私と同じ気持ちだ”と言ってくれたのに、なぜ、あなたは理解してくれないの!」と、違う方向にクレームが発展するケースもあります。お客様は対応者の言葉を、その企業・組織の言葉として受け止めます。クレームを受けるときは、常に組織の代表として「対応をしている」ことを心掛けるようにしましょう。
同じ話をしてくる人の対処の仕方
お客様の中には何度も同じ話をしてきたり、業務にあまり関係のない話をしてくるお客様もいます。例えば、年輩のお客様でよくある事例として、過去に受けた嫌な対応について、何度も伝えてくる人がいます。特に「この人は分かってくれる人だ」と思われると、何度も同じ内容のクレームを伝えてくることがあります。
●文/谷厚志(たに あつし)
“怒りを笑いに変える”クレーム・コンサルタント。一般社団法人日本クレーム対応協会の代表理事。
学生時代より関西を拠点にタレントとして活動。芸能界を引退後、会社員としてコールセンターやお客さま相談室のクレーム対応責任者を歴任。2,000件以上のクレーム対応に接し、クレーム客をファンに変える独自の対話術を確立する。2011年、クレーム対応のコンサルティング会社を立ち上げて独立。圧倒的な経験知と人を元気にするトークが口コミで広がり、年間200本以上の講演・研修に登壇する。著書に『損する言い方 得する言い方』(日本実業出版社)、『失敗しない! クレーム対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ピンチをチャンスに変えるクレーム対応術』(近代セールス社)など。フジテレビ「ホンマでっか?TV」、日本テレビ「ZIP!」など、メディア出演多数。
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