スピード感が心証を左右する
クレームを受けて現場の確認をしたところ、自分たちに非があり、お客様に多大な迷惑をかけてしまうことがあります。故意ではなくても、お客様の信頼を失いかねない重大なミスを起こしてしまうことは起こりえます。
こんな場合に意識すべきことは、非を素直に認めて謝罪をし、迅速に対応することです。上司に怒られて自分の会社での評価が下がってしまうことを恐れ、自分で何とかしようとしたり、ごまかそうとしたりしてはいけません。
このようなクレームがあったら、まず上司に報告し、すぐにお客様に「私共に重大なミスがございました。弁解の余地もございません」と謝罪するようにしましょう。スピード感がこの後の心証を大きく左右します。
さらに、急いで対応しないといけない案件の場合、最善のリカバリー策をお客様に提案し、伺いを立てるようにしましょう。お客様の協力も得ながら、自社のミスによる被害や問題を最小限に食い止めることを最優先に考えましょう。
謝罪後の対応が重要
何とか問題を収束することができたら、この後の対応がとても重要になってきます。あらためてお客様に謝罪し、2つのことを提示するようにします。
1つ目は「なぜ、今回のようなことが起きてしまったのか?」です。ここが明確にならないと、お客様は「同じことが起きるのではないか?」と不安になります。「個人の問題なのか、会社全体の問題なのか」を明らかにする必要があります。
2つ目は「同じことを起こさないために、どう改善していくか?」です。「再発防止に努めます」と、決意を口にしただけでは不十分です。具体的に仕事のやり方を「どう変えていくのか?」を文書化することです。
この2つをお客様と共有することで、もう一度チャンスをいただけるはずです。
クレーム対応の上級者がしていること
クレーム対応のクロージングの言葉として「その他、ご不満な点やご迷惑をおかけしていることはございませんか?」と質問をする人がいます。実はこの質問は、クレームを余計に長引かせることがあります。お客様に気遣いの言葉を投げかけているように思いますが、この質問によってお客様は不満な点を頭の中で探し、過去の不満を話し始めることにもなりかねません。
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●文/谷厚志(たに あつし)
“怒りを笑いに変える”クレーム・コンサルタント。一般社団法人日本クレーム対応協会の代表理事。
学生時代より関西を拠点にタレントとして活動。芸能界を引退後、会社員としてコールセンターやお客さま相談室のクレーム対応責任者を歴任。2,000件以上のクレーム対応に接し、クレーム客をファンに変える独自の対話術を確立する。2011年、クレーム対応のコンサルティング会社を立ち上げて独立。圧倒的な経験知と人を元気にするトークが口コミで広がり、年間200本以上の講演・研修に登壇する。著書に『損する言い方 得する言い方』(日本実業出版社)、『失敗しない! クレーム対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ピンチをチャンスに変えるクレーム対応術』(近代セールス社)など。フジテレビ「ホンマでっか?TV」、日本テレビ「ZIP!」など、メディア出演多数。
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