上司は安心しているのに、自信のないままの部下
「部下の成長段階に応じた育成のステップ」では、育成の第1段階「教えるマネジメント」、第2段階「引き出すマネジメント」、第3段階「任せるマネジメント」と、左下から右上に向かって、比例して進んでいくことが望ましいのですが、これだと、左上と右下に空白の地帯が生まれてしまいます。
左上は「上司は安心しているのに、部下は自信がない」という領域で、右下は「上司は不安に感じているのに、部下は自信満々である」という領域になります。
今回は左上の「上司は安心しているのに、部下は自信がない」について、考えていきたいと思います。
図5を見てください。実は左上の領域も、ど真ん中の領域である「引き出すマネジメント」になります。そして、この領域で重要なのが、第3回のコラム『成功体験の積み重ねが、自身とやる気を生み出す』でもお伝えした“成功体験”なのです。

上司は安心しているのに、自信がない人というのは、自己肯定感の低い人が多く、ポジティブ思考というよりはネガティブ思考で、慎重派、心配性の人が少なくありません。何か新しいことにチャレンジしようとしても、「失敗したらどうしよう?」「自分では、うまくいかないのではないか?」と、悪いほうへと頭が傾き、普通にやればそれなりの力が発揮できるのに、その自信のなさから本来の力が出ず、「任せるマネジメント」の領域まで育ってくれない人だと思ってください。
だから、自信さえついてくれれば、難なくこの壁を乗り越えることができます。
例えば、逆上がりができなくて、鉄棒の前で、「もういい!鉄棒なんて大キライ!もうやらなくていい!」と、べそをかいていた子供も、ちょっとしたコツをつかんでできるようになると、泣いていたことなどケロリと忘れ、「鉄棒大好き!」と何回も逆上がりを笑顔で繰り返している姿を想像してくれればいいと思います。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。
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