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人事のための「お金」の学び(小橋一輝)

人事が最初に押さえるべき3つの数字

人事の仕事(採用・定着・育成など)は、「会社のお金をどう使うか?」を考えることでもあります。人事に求められる会社のお金に関する知識や考え方を解説します。(2026年4月7日)

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賃上げの提案を、数字で示せるか?

「賃上げをしたいが、どこまで上げられるのか分からない」
「採用にお金をかけすぎて、利益がほとんど残らない」
 こうした悩みを抱える経営者や人事担当者が増えています。その根底にあるのは、人事の判断が「感覚」や「前例」に依存しており、財務の数字と結びついていないという現実です。

 もちろん、人事担当者が経理や財務の専門家になる必要はありません。ただ、自社の損益構造を大まかに理解し、「人件費がどのような文脈で語られるべきか」を把握しているかどうかで、社内での対話の質は大きく変わります。賃上げの提案をするにも、採用計画を立てるにも、その根拠を「数字で示せるかどうか」が、人事担当者の影響力を左右する時代になっています。

 本連載では、財務知識がゼロの方でもすぐに実践し、取り組むことができるよう、人事の仕事を「お金の視点」から捉え直すための考え方と手法をお伝えします。
 第1回は、最初に知っておくべき3つの数字と、それを使った「人件費の現在地」の確認方法から始めましょう。





最初に覚える数字は、たった3つ

 人件費を考える上で、財務諸表を全部読む必要はありません。人事担当者が押さえるべき数字は、次の3つだけです。

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会社に入ってくるお金の総額であり、経営の出発点となる数字

�∩突�(売上総利益)
売上高から、商品の仕入れ費用や外注費など「売上を上げるために直接かかったコスト」を引いた金額

��人件費
給与・賞与だけでなく、会社が負担する社会保険料や退職金積立も含まれる

 
この3つの数字から導き出せる「労働分配率」が、人事が最初に把握すべき指標です。計算式は「労働分配率(%)=人件費÷粗利×100」です。例えば、粗利が5,000万円で人件費が3,000万円であれば、労働分配率は60%になります。
 この数字が意味するのは、「会社が生み出した利益のうち、従業員への報酬としてどれだけ配分しているか?」という割合です。シンプルながら、人件費の現状を客観的に把握するための強力な物差しになります。


「60%」は高いのか、それとも低いのか?

 労働分配率の適正水準は、業種によって異なります。中小企業では、製造業55〜65%、卸売・小売業50〜60%、サービス業60〜70%、IT・専門職業65〜75%程度が目安としてよく参照されます。

 まずは自社の数字を、この目安と照らし合わせてみてください。労働分配率が高い状態にある場合は、粗利に対して人件費の占める割合が大きく、その分だけ他の経費や利益に回せる余地が狭まっている状態です。逆に低すぎる場合は、従業員への還元が不十分であり、離職や採用難のリスクが高まりやすい状況とも言えます。

 重要なのは、数字の高低を判断するだけでなく、「なぜ、その数字になっているか?」を考えることです。売上が落ちて粗利が下がったのに、人件費が変わらなければ労働分配率は上がります。一方、生産性向上や価格改定によって粗利が増えれば、人件費を増やしても労働分配率は変わらない、あるいは下がることもあります。この構造を理解していると、賃上げの議論が格段にしやすくなります。
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●文/小橋一輝(こばし かずき)
株式会社Elavis代表取締役、財務・金融コンサルタント、銀行取引アドバイザー
大学卒業後、地方銀行に入行。融資渉外担当として、多種多様な企業の創業から事業承継までのさまざまなステージをサポート。2019年に独立し、元銀行員としての豊富な経験を活かし、企業の資金調達や銀行取引の健全化などを支援。これまでに500社以上の企業、延べ1,000人以上の経営者・起業家・開業医を支援し、財務戦略の最適化をサポート。セミナー登壇・企業研修の実績多数。
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