【第37回】定番を利用する「アフォーダンス理論」
商談や接客時など、ビジネスシーンに応用できる心理学の知識を解説します。
アフォーダンス理論とは?
アフォーダンス理論とは、環境が動物に対して与える意味の事です。物体の持つ属性(形、色、材質など)が、物体自身をどう取り扱ったらよいかについてのメッセージをユーザに対して発している、とする考えです。簡単にいえば見た目で「○○といえばこういうもの」と思わせる事です。
●解説
世の中には「○○といえばこういうもの」と思わせるものがあります。例えば、ホームページやブログには他のページへのリンクが貼られている事がありますが、その文字のほとんどは青字です。これが赤や黄色の字ではクリックされる確率は一気に下がります。青字を見るとリンクが貼られているとすぐに分かるのです。
これはパソコン上だけの話ではなくリアルの話でも同様です。町で赤いちょうちんが下がっている店を見かけると《飲み屋だな》とすぐに分かります。これが青いちょうちんだったり、黒いちょうちんだったりしたら気持ち悪く感じます。やはり定番の色というものがあるのです。
アフォーダンス理論はマイナスの効果もあるので気をつけなくてはなりません。家に届くダイレクトメールを見てください。そのほとんどが、宛名は印刷もしくはタックシールになっているでしょう。印刷された宛名を見て《あぁ、また役に立たないチラシだな》と判断するのです。
それではアフォーダンス理論を営業活動に応用してみましょう。ある通信講座の会員さんとの話です。内容はお客さまから資料請求をいただくためのレスポンスレターに関してでした。
会員さんは「今はFAXで送ってくる方はほとんどいないから、レスポンスレターの申込欄をカットしました」と主張します。私は反対したのですが、まずはやってみたいと言いますので、その意見を尊重しました。
その2カ月後の事です。会員さんが照れくさそうに「いやぁ、申込欄をなくしたら、どういう訳か反応がなくなって。やっぱり元の形に戻しましたよ」と報告してきたのです。この話を聞いて、他の会員さんの資料請求型のレスポンスレターをすべてチェックしてみました。
すると、反応のいいレスポンスレターには全て申込欄が設けてあった事に気付きました。私自身が使っていたレスポンスレターにも全て申込欄が付いていたのです。実際のところ、お客さまはFAXで資料請求してくるわけではありません。しかし、申込欄が付いているレスポンスレターを見た瞬間《カタログを請求するものだ》と認識できます。だから反応がいいのです。
一方、申込欄がないレスポンスレターはある程度のところまで読まないと、資料請求のものかどうかが分かりません。じっくり最後まで読み込むお客さまは少ないですから、反応率が下がります。FAXの申込欄は必要ないように思えますが、重要な役割を果たしているのです。
「○○といえばこういうもの」という定番を利用してお客さまからいい反応を得てください。
菊原智明●営業コンサルタント/関東学園大学経済学部講師。大学卒業後、大手住宅メーカーに入社し、営業部に配属。7年間のダメ営業マンから4年連続トップ営業マンへ。現在は【訪問しないで売る】営業コンサルタントと大学で学生に向け【営業の授業】をしている。著書に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(アスカビジネス)など多数。http://www.tuki1.net/
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