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これからの人材活用(2012年4月〜2013年3月)

第5回 事例研究/パート社員「130万円の壁」を、会社負担で取り払う!?(クリロン化成)

この8月10日、パートの厚生年金適用拡大法案が成立しました。新たに被保険者となるパートに対し、企業はその保険料を折半で支払うこととなるため、同法案に対しては、企業側から大きな反対もありました。
その厚生年金保険料について、いわゆる「130万円の壁」を超えたパートの“本人負担分”まで、補助している企業があります。その根底には、男女もパートも分け隔てなく育成し、活躍してもらう、企業姿勢がありました(取材・文・写真/アイデム人と仕事研究所 所長 平田未緒)。

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 女性の就労・活躍を阻む要因の1つとされる「年収130万円の壁」。この壁を取り払い、女性パート社員の能力を存分に引き出し発揮させている企業があります。大阪市東淀川区に本社を置く、真空パック等フィルムメーカー、クリロン化成です。 

 年収130万円は、厚生年金の第3号被保険者であり健康保険の被扶養配偶者の、認定基準。サラリーマンの妻は、自身の年収が130万円未満であれば、夫が加入する厚生年金・健康保険の被扶養者として、自ら保険料を支払うことなく将来基礎年金を受給でき、健康保険に加入できます。

 ところがこれを超えると、保険料を会社と折半で自ら支払い、自分で厚生年金・健康保険に加入する必要があるため(労働時間等が適用範囲未満の場合は国民年金・国民健康保険に加入)、手取り額が減ってしまいます。これを嫌い、年収を130万円未満に抑えようとする主婦が多いことから、「壁」と呼ばれているのです。

 クリロン化成ではこの「壁」を、年収130万円を超えた主婦パート社員が、新たに支払うことになる保険料分だけ、給与を上乗せして支払うことで、乗り越えました。要するに会社が、本来本人が負担すべき保険料を、肩代わりしている計算です。

 ちなみに、社員数120人の同社の売上は、40億2200万円(2009年)、42億4400万円(2010年)、44億600万円(2011年)の右肩上がり。「好調だから、肩代わりできるんだ」ではありません。乱暴に言えば「肩代わりしたから、好調」なのです。

 その理由を、同社の芯の通った取り組みに見ていきましょう。


パート社員が「もっと活躍できる」ように

 「パート社員ご本人の保険料を企業が補助する、当社独自の『130万円の壁補助制度』は、多くの方に驚かれます。でも、私たちにとって、違和感はありません。もちろん、事前に試算を繰り返し、本人にも当社にも有意義なことを確認してからの実施です」

 と、人材部主任の友田恵美子さん(写真左)は、導入の経緯を振り返る。

 制度の発足は2006年。業務が増え、正社員が皆「手いっぱい」なときだった。そこで「パート社員に、もう少し長く働いてもらえないだろうか」と考え、打診したところ、ネックになったのが「130万円の壁」である。
 
 「パート社員にもっと活躍してほしいのに、国の制度が邪魔をしている状態でした。半面、パート社員に聞いてみると、130万円の壁を超えてしまい、手取りが少なくなることには、抵抗があることも分かりました。それならば、厚生年金保険料のご本人負担分を、会社が上乗せしてあげたらいいのでは? と考えたのです」と友田さん。

 夫の扶養を外れ自ら厚生年金に加入したパート社員の保険料を、会社負担分のみならず本人分まで会社が払えば、その人件費は、最低でも1割は高くなる計算だ。理論上パート社員に、より生産性の高い仕事を行ってもらわなくては、見合わないことになる。

 「そこは大丈夫だと思います。現場からは『パート社員が全体に、すごくレベルアップしている』との声を聴いています。例えば当社では、社長表彰がありますが、今回は3人のパート社員も表彰されました」と、同じ人材部の福田真美子さん(写真右)は説明する。

 生産性の向上は、仕事に習熟し、企業への貢献意識が育ってこそ。だから同社では、雇用契約は1年ごとの更新だが、パート社員も長期雇用を前提とする。ちなみに社長賞の3人は、勤続12年、9年、5年である。

 時給は「地域相場より少し高めの水準」とするが、担当する仕事や経験に応じ当然異なり、最も高い人はその水準の1.5倍近くなる。ちなみに2012年8月現在、大阪府の最低賃金は786円だ。


社内の課題対応を制度化する

 上に見た「130万円の壁補助制度」同様、クリロン化成には、“具体的な課題”が発生すると、皆で知恵を出し工夫して、対応策を考える体制がある。

 例えば、初めて産休・育休を取得する事務社員が発生した九州営業所である。同営業所では、代わりの派遣社員を採用せず、入社1年目の男性営業社員が事務を担当した。結果、仕事の共有ができ、誰が休んでも大丈夫な体制ができた上、作業は効率化。営業社員が事務社員の気持ちを理解できるなど、副産物も多かった。そこで、これを他の営業所にも、横展開したのである。

 課題を共有し解決する風土は、昔からあった。仕事の効率化のため、全国の事務社員が一堂に会して話し合う『Betty会』が良い例である。会は1998年に始まり、役割を全うしたため2005年に発展的に解散した。

 育児支援制度の多くが同様に、課題解決を考えるなかでできてきた。例えば育児休業は、1992年に岡山工場の事務社員の出産に合わせて、運用がスタートした。その後8年を経た2000年、技術職社員が出産する際、本人の希望を受けこれまで6カ月間だった休業を1年に延長した。

 以来2005年までに、正社員・パート社員合わせて出産は5回。各1年ずつ休むとなると、現場任せでは当然、仕事が回らなくなる。

  そこで、育児休業を職務再編の機会とすることにした。個々人の職務の内容と難易度、実際に行っている時間を調べて職務分析表を作成し、部署内での作業効率化や担当替えを行った。また、他部門でもできる仕事を移管したり、あるいは派遣社員に任せた。
 
 育児休業をきっかけに、仕事の効率は、格段に高まったという。

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・所在地(本社)/大阪府大阪市東淀川区南江口1-3-20
創立/1960年
従業員数/145人(うちパート社員25人)
資本金/3,200万円
年商/ 44億600万円(2011年9月)
事業内容/共押出し多層フィルムの製造・販売
ホームページ/http://www.kurilon.co.jp/

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