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やる気を引き出す仕組みや教育制度などの人事施策、働きやすい職場環境の実現など、人に関する企業事例を紹介します。(2022年6月7日)
ホームページ/ http://www.morishitagumi.com/
奈良市をはじめ県北部に人口が集中する奈良県において、県南の吉野郡に本拠を置く森下組は、域内の建設業界におけるリーディングカンパニーと言える存在である。「人材力こそが当社の競争力の源泉である」と考える代表取締役社長の森下秀城さんに、近年の取り組みについて語ってもらった。
―以前から奈良県において十指に入るゼネコンだった森下組ですが、ここ10〜15年くらいで県を代表する建設事業者として広く認知されるようになりました。躍進の理由や背景にある業界の変化について教えてください。
公共事業分野では、2000年代に入って「安いほどよし」とするそれまでの風潮に対する反省から、きちんと技術力や提案力を評価してそれを反映する形で落札者を選定する総合評価方式への移行が進みました。従来から技術人材の育成に力を入れていた当社は、この制度変更を最大限活かすべく、技術提案力強化に向けた取り組みを進めました。企業所在地による制約がなくなり、県内のどの地域の入札にも参加できるように、制度があらためられたことも追い風になりました。
代表取締役社長 森下秀城さん
―建設業は一品生産ということもありスケールメリットが効きにくいと言われるものの、1人当たり売上が1億円を優に上回り、誰もが知るスーパーゼネコンにも引けを取りません。
総合評価方式において高得点を狙う上で、その案件についての技術提案と合わせて重要なのが技術陣の厚みです。技術者登録制度と言いますが、簡単に言うと、必要な資格を保有する技術者をちゃんとその案件に割り当てられるのかが問われます。当社の職員数は67名ですが、建築・土木・舗装の主要3事業の一級施工管理技術者の延べ人数は50名を上回り(取締役を含む)、6名の一級建築士のほか、管工事や造園施工、電気工事等の技術者も機動的に配置できるよう陣容を整えています。
―優秀な技術者をひきつけるために、どのような施策を講じているのでしょうか?
妙策などありません。知名度が及ぶのは奈良県内のみですし、同業他社と同様に採用については当社も苦労しています。
新卒であれば人事部で、中途であれば配属が想定される部署で、どういう能力や経験を持った人が欲しいという基準を決めて選考を進めてくれています。基本的には各部門の責任者に任せているので、私が最終面接する段階でふるいに掛けるということはなくて、「これからよろしくお願いしますね」という気持ちでお目にかかっています。経営者として気をつけているのは、景気がよいから多く採用する、不景気だから手控えるといった、短期的に右往左往するような経営をしないということです。
―もう少し詳しく教えてください。
建設業に限らず、景気動向に応じて募集人数を増減させる企業が世の中では多いと思います。ただ、好況でたくさん受注ができた(できそうだ)からといって、新卒採用を増加させたとしても即効性はありません。まずは2級施工管理者の資格を取り、サブとして実務経験を踏む。さらに次に1級をとり、「彼ならばこの案件を任せられるだろう」となった暁に、ようやく現場所長に起用されるわけです。
当社では遅くとも30歳までにそうなってもらいたいと考えていますが、いずれにせよ短期的な話ではありません。不況で大手が採用を手控えれば、その分、優秀な人がわが社の門を叩いてくれる可能性も高まります。チャンスにもかかわらず採用を絞り込むとしたら、その間の業績確保(人件費負担)に不安があるからでしょう。若手を採用してじっくりと育成する余力を持てるだけの経営を行うことが、経営者としては大切だと考えています。
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