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シゴトの風景

第122回「会社を辞めるか、しがみつくか?」

働く個人にこれまでのキャリアや仕事観を聞き、企業が人を雇用する上で考えなければならないことを探ります。(2023年7月4日)

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「早期退職した仲間たちのその後を見ていると、会社を辞めたほうがいいのか、会社にしがみつくべきか、迷ってしまいます。年齢的には正直、会社に居づらいんですけどね」
 ある大手情報サービス会社で人材ビジネスのクリエイティブ職として働く三塚学さん(仮名・48歳)は、これから先のキャリアを考えて頭を悩ませている。

 というのも、三塚さんの会社はかなり条件のいい退職金をもらって早期退社するというのが一般的。創業から半世紀以上が過ぎた今でも、定年まで勤めあげた社員は数人しかいないとうわさされている。
「40歳前後のとき、まわりの仲間たちが次々に辞めていきました。しかもその多くは、起業して会社を設立したり、自分でお店を立ち上げたりと、華々しい第二のキャリアをスタート。しっかりとしたビジョンを持って退職していたので、偉いなぁと思いました」





 そんな大それた野望を抱くわけではない保守的な三塚さんは、このまま平凡に定年まで過ごしたいというタイプ。ところが、歳を重ねるごとに後輩たちの視線が気になるようになってきた。
「早期退社後に華々しい活躍を見せている人が多い当社の場合、“会社に残る=仕事ができない人”と見られがち。マネジャーからメンバーへの降格もザラで、安定志向の中年社員にとっては居づらい会社です」

 大きなミスをしたわけでもないのに、数年前にリーダーのポジションを降ろされたという三塚さん。その瞬間、「自分が会社から必要とされていない、と気づく時期が来るんだよ」と言って辞めていった、ある先輩の言葉がよみがえったという。

「それ以来、自分が会社のお荷物になっているんじゃないかと思うようになり、ますます職場に居づらくなりました。そのタイミングでコロナ禍に突入し、リモートワーク中心になったのが救いでしたね」
 三塚さんの身近にいた早期退職者たちの多くは、それまでのキャリアを活かして人材サービス会社や広告制作会社を設立。人材コンサルタントとして、自分の名前で勝負している人も少なくない。

「マスコミなどで話題になる会社へと育て上げた先輩もいますし、立ち上げた会社を上場させた後輩もいます。また、本を出版したり講演をしたりと、業界有名人として活躍している同期も。キラキラした第二の人生を歩んでいる元同僚たちを見ると、『この際、自分も思いきって独立しようかな』という野望が生まれつつあります」

 とはいえ、早期退職した全員が全員、順調なキャリアを歩んでいるわけではないようだ。なかには、事業を立ち上げて失敗し、一家離散してしまった先輩もいるという。
「そんなネガティブな話を聞くと、強い情熱や思い入れがない自分のようなタイプが起業や独立をするのは危険だな、と思ってしまいます」
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につづく
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