既存スタッフや採用したスタッフに定着してもらうために、企業は「どんなことを考えればいいのか」「何を準備をすればいいのか」などを解説します。(2023年10月26日)
クレーム報告は、早さを褒める
管理職をしていると避けて通れないのが『クレーム対応』です。いくらこちらがクレームにならないように対応しても、相手の受け取り方や想定外の出来事により、クレームをゼロにはできません。スタッフからのクレーム報告に対しては、どう対応するとよいのでしょうか。
クレームの報告を受けるとついつい険しい顔になりがちですが、そこをグッとこらえて、まずは報告してくれたことに感謝しましょう。そして、報告が早かったことを褒めましょう。クレーム対応の基本は迅速な対応です。いくら誠意をもって謝罪しても随分と待たされた後であれば、クレーム内容に加えて『待たされた』ことが加わり、収まるものも収まらなくなります。
そのため、管理職としては早く動く必要があるわけです。しかし、自身がいくら早く対応しようと思っていても、スタッフの報告が遅かったらどうでしょう。報告を受け、急いで謝罪したところで「謝るのが遅い!」となってしまうのです。
なぜ報告をためらうのか?
そのように考えると、スタッフの行動は『迅速に報告する』がベストなのです。ここで「早く報告するのが当たり前では?」と思う人もいることでしょう。しかし、実際には報告が遅くなる人がいます。それは、単純に報告を忘れている場合もありますが、多くは報告をためらう何らかの理由があって遅くなっています。
例えば、報告に対して管理職が『険しい顔』をしたり、『つらそう』にしたり、クレームの原因になった犯人を探し始めたりしたとします。このように、自分の報告で誰かが嫌な思いをするのを目の当たりにすると「言わない方がよいのかも?」と思ってしまい、報告が遅れる結果となります。
結局は、よい報告だろうと悪い報告だろうと同じです。早く報告してくれたことに「早く報告してくれてありがとう。いつも助かるよ」と伝えることが大切です。スタッフが早く報告することに、メリットを感じられるようにすることが大切です。
「なんで?」と聞かない
次にスタッフの『ミスの報告』についてですが、こちらもクレームの場合と同様に早い報告が鉄則です。しかし、こちらはスタッフ自身のミスであるため、クレーム報告の場合よりも遅い報告になることが往々にしてあります。
これは『ミスは悪いこと』や『ミスは自分の責任』と認識していることによるもので、スタッフはミスしたことを言い出せないまま隠蔽してしまうと、隠蔽体質の組織になります。すると組織内の雰囲気はみるみる悪くなってしまいます。
まずは、ミスを責めないことが大切です。スタッフのミスの報告に対して「なんで?」と聞きたくなるでしょうが、この言葉は危険です。「なんで?」は自分にとって「なぜそのようになったのか?」という、原因を追究するための質問と思っているかもしれませんが、スタッフにはそのように聞こえていません。「なぜあなたはミスをしたのか?」という、責任を追及するための「なんで?」に聞こえています。この「なんで?」によって『ミスは悪いこと』『ミスは自分の責任』という認識が植え付けられてしまうのです。
●文/森崎のりまさ(もりさき のりまさ)
職場いきいきコンサルタント。22歳から介護業界で働き始め、約20年間、現場に携わる。介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得し、訪問介護管理者、老人ホーム施設長を経験。施設長を務めていたとき、一般的に離職率が高いといわれる介護施設で「2年間退職者ゼロ」を実現する。2021年、これまでの実績と経験を活かし、『仕事=楽しい』に変える職場いきいきコンサルタントとして独立。企業の社員研修や社員面談などを請け負い、職場の環境改善に尽力している。著書に『退職者を出さない管理者が必ずやっていること』(産学社)Amazonランキング人事部門1位。インターネットラジオ局『ゆめのたね放送局関西チャンネル』のラジオ番組『今日も明日もポジッピー』パーソナリティ。
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