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労働関連法で実務に直結した部分をクローズアップし、分かりにくい点や対応策などを解説します。
長時間労働是正が求められる中、時間外労働に関する協定(36協定)の重要性が再認識されています。今回は、36協定の「特別条項」に関する留意点についてまとめてみます。
<特別条項付き協定>
業務の都合で、臨時に限度時間(1カ月45時間、1年間360時間。ただし1年単位の変形労働時間制の場合は、1カ月42時間、1年間320時間)を超えて、時間外労働を行わせる場合は「特別条項付き協定」を締結します。要件としては次の事項があげられます。
(1)特別の事情等
一時的または突発的な事由であり、36協定に定める限度時間以内の時間外労働の事由より限定的であり、かつ1年に6回を超えないことが必要です(下記は厚労省のリーフレット例です)。
・認められるもの
予算・決算業務、納期のひっ迫、大規模クレーム対応、機械のトラブル対応
・認められないもの
(特に事由を限定せず)業務繁忙なとき、会社が必要と認めるとき
(2)労使協議の手続き
特に制約はなく、特別条項を適用する場合は必ず決めた手続きによらなければなりません。手続きなしで労働時間を延長した場合は法違反となります。
(3)特別延長時間
限度時間は示されてなく、労使の自主的協議に委ねられています。しかし、過重労働による健康障害を防止する観点から、過労死ラインとなる労働時間(1カ月100時間、2〜6カ月を平均して月80時間)を参考に、長時間労働とならないように留意しなければなりません。また特別延長時間を、できる限り短くするよう労使で努めることとされています。
(4)限度時間を超える時間外労働の割増賃金率
限度時間を超えて働かせる一定の 期間(1日を超え3カ月以内の期間、1年間)ごとに、割増賃金率を定めなければなりません。法定の割増率(2割5分)を超えるよう努めるものとされています。
<その他>
36協定は、締結・届出で完了ではありません。労働者に内容を周知する必要がありますので、ご注意ください。今後、36協定は現行の限度時間や特別条項の延長時間に一定の制約を課し、罰則規定を設けるなど、規制強化の可能性が高いため、法改正の動向を注視する必要があります。
●文/田代英治(たしろ えいじ)
社会保険労務士。株式会社田代コンサルティング代表取締役。神戸大学経営学部卒。企業の人事制度の構築や運用、人材教育などに取り組む。著書に「人事部ガイド」(労働開発研究会)、専門誌への寄稿など執筆実績多数。
http://tashiro-sr.com/
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