近年、多くの企業が人材確保に頭を悩ませています。
私は自社の求人広告を担当する営業社員と行動を共にすることが度々あり、その商談の席でお話をお聞きしていると、募集費用の拡大や外国人労働者の雇い入れなど、様々な試みや工夫を凝らしていらっしゃる様子を垣間見て、採用市場の難しさ、厳しさを日々実感しています。
少子高齢化による労働人口の減少はもはや避けられない現実です。加えて、生成AIの急速な普及による働き方の変化や、退職代行サービスの一般化など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。
こうした時代において、企業が持続的に成長していくためには何が必要なのでしょうか。その答えの一つが「若手社員の育成」にあると考えます。
あるお客様の研修当日での出来事
これは今年の5月、関西のある企業様の新人営業研修での一コマです。
その企業様では新卒採用は行わず、毎年秋口から春先にかけて中途採用で営業社員を募っています。今年は10名ほど採用され、全員がその研修に参加の予定でした。研修はホテルの貸会場を使って3日間にわたって行われます。事業所が関東・東海・近畿と各方面にあるため、採用活動は大がかりで費用も相当かけていらっしゃいます。
さて話を戻しますと、研修当日私が会場に足を踏み入れ、ご担当者へご挨拶するが早いか、急遽1名欠席となったとお聞きしました。ご担当者は怒り心頭というご様子でこうおっしゃいました。
「昨日、退職代行の会社から電話がかかってきて、〇〇さんが退職を希望されています…だって! 全くふざけるなですよ、色々準備出来ているというのに…」
これまでにも他で退職代行を使っての退職のお話はお聞きしたことはありましたが、こんなにもホヤホヤで生々しい事例は初めてだったので驚きました。ニュースなどで取り上げられることも多い退職代行ですが、自分の中ではどこかリアリティがなく、時代も変わったなぁ程度に思っていましたが、実際はもう結構当たり前になっているのでしょうね。少しでも務めた結果ならば理解できなくもないですが、まだこれからという状況でなぜ退職という選択に至るのでしょうか。とにかくご担当者が気の毒でなりませんでした。
深刻化する若手社員の早期離職
厚生労働省の調査によれば、新卒社員の約3割が入社3年以内に離職するとされています。企業側からすれば、多くの時間と費用をかけて採用した人材が十分に戦力化する前に退職してしまうことは大きな損失です。
しかし、若手社員の離職理由を見てみると、単に待遇や給与だけの問題ではありません。「自分の成長が感じられない」「仕事の意味が見出せない」「相談できる人がいない」「職場に居場所がない」といった声が数多く聞かれます。
つまり、多くの場合は能力不足ではなく、育成や関わり方の問題が背景に存在しているのです。かつては終身雇用が当たり前であり、多少厳しい指導を受けても「石の上にも三年」という価値観が通用しました。しかし現代の若手社員は違います。転職への心理的ハードルは低く、上述の通り退職代行サービスの利用も珍しいことではなくなりつつあります。
安易な離職を肯定するわけではありませんが、「辞めたいと思っているけど我慢する」という選択肢が以前ほど一般的ではなくなっていることは事実でしょう。だからこそ企業側には、従来以上に計画的かつ丁寧な育成が求められているのです。
社員の高年齢化がもたらす新たな課題
若手社員の定着が進まない企業では、組織の年齢構成にも歪みが生じます。採用はしているものの若手が定着せず、結果として40代・50代以上の社員が多数を占める組織になってしまうケースです。もちろん経験豊富なベテラン社員は企業にとって貴重な財産です。しかし、組織の持続性という観点では課題もあります。
例えば、
・将来的に管理職候補が不足する
・技術やノウハウの継承が進まない
・新しい発想や価値観が入りにくい
・世代間ギャップが拡大する
といった問題が発生しやすくなります。特に中小企業では、「気が付けば管理職候補がいない」「数年後の事業継続に不安がある」という声も少なくありません。人材育成は単なる教育施策ではなく、将来の組織づくりそのものと言えるでしょう。
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●文/山田賢司(やまだ けんじ)
株式会社アイデム メディアソリューション事業本部キャリア開発支援チーム 人材育成・研修プランナー
大学卒業後、教職の道を志し、人生2度目の浪人を選択するも夢破れ挫折を味わう。その後、高額収入の得られる肉体労働やナイトワークに従事し資金を貯めた後、イベント企画会社を起業。しかし業績は安定せず見切りをつけ株式会社アイデムへ営業(現:採用プレゼンター)として入社。約20年間、顧客対応のみならずマネージャーとして営業所運営・部下指導についても多くの経験を積む。現在はこれら様々な経験を活かし研修プランナーと神社の宮司、2つの顔を使い分けつつ日々奮闘中である。