「求人を出しても応募が来ない」
「必要な人数が確保できない」
企業の経営者や人事担当者から、このような悩みを聞く機会が増えています。この状況は、一時的な景気変動によるものではありません。日本では出生数の減少が続いています。現在の大学生世代でも約110万人規模まで減少しています。今から6年後の2032年度には、新卒市場への供給が初めて100万人を割り込む見込みです。
人口減少で採用競争はますます厳しくなることを考えると、これからは採用だけで人手不足を解決することは難しいと言わざるを得ません。企業は、必要な人員を確保できない状況を想定する必要があります。それは、言い換えれば「限られた人材で、どれだけ成果を出せるか?」を考えることでもあります。そこで重要になるのが、AI(人工知能)の活用です。
AI導入に失敗する会社の共通点
現在、多くの企業でAIの導入が進んでいますが、導入しても成果につながらない企業には共通点があります。それは「何を効率化したいのか?」が整理されていないことです。同じ情報の二重入力、担当者によってやり方が異なる業務、いつの間にか形式だけになっている報告書や会議などがあるような状況でAIを導入しても、非効率な業務を高速化するだけです。結果として現場の不満だけが残り、「AIを入れたけど意味がなかった」という声につながります。
AIは魔法の道具ではありません。「何をやめるか?」「何を人がやるか?」「何をAIへ任せるか?」を整理してから使うことで、うまく機能します。その整理の第一歩は、仕事そのものを減らすことです。
忙しいからこそ見直す
まず、自社の業務を書き出してみましょう。「忙しいから見直す時間がない」というのが多くの現場の実情ですが、だからこそ一度立ち止まって見直す必要があります。業務を書き出したら、紙からシステムへの転記や社内向けの複数の報告書、同じ質問への繰り返される回答作業など、不要な仕事はやめましょう。そしてやるべき業務の中から、人が行わなくてもよい業務を見つけます。
業務は、「作業」と「仕事」の2つに分けられます。「作業」とは、やり方の手順が決まっていて、誰がやっても同じ結果になるものです。「仕事」は、業務を遂行するために考えることや判断すること、経験などが必要なものです。AIに任せるべきなのは「作業」です。
議事録の下書き、FAQ作成、報告書のドラフト、マニュアル作成などの業務は、人が長時間かけて行う必要はありません。例えば、採用活動で必要な求人票は、毎回ゼロから書く必要はなく、過去の実績をもとにAIでたたき台を作ることができます。応募者情報の整理や面接日程の調整も、AIや連携ツールで対応できる「作業」です。AIを使うことで、単純作業に取られていた時間を顧客対応や人材育成など、人にしかできない「仕事」に使えるようになります。
自動化の前に、AIで"仕分け"を手伝ってもらう
ここまでは、AIで「作業」を効率化する話をしてきました。次に少し視点を変えて、“通常のAI活用の前段階”でのAI活用をご紹介しましょう。
業務を書き出し、「作業」と「仕事」に分けることの大切さをお伝えしましたが、いざ自分の業務を前にすると、「これは作業なのか、仕事なのか?」の線引きは、案外むずかしいものです。毎日やっている業務ほど当たり前になっていて、自分では客観的に見直しにくいからです。
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●文/富 光弘(とみ みつひろ)
みんまね!合同会社代表、ITコンサルタント、リスク対策専門家
日本電気株式会社(NEC)に36年間勤務し、数多くのシステム構築やプロジェクト統括、BCP(事業継続計画)策定支援に携わる。2024年に独立し、複数の企業でIT顧問に従事。ITの基礎からサイバーセキュリティ、生成AI活用、デジタルマーケティング、人手不足対策(リスキリング)など、ITに関する企業研修やセミナー、講演活動も行っている。著書に『サイバーセキュリティのための行職員対応ガイド』(近代セールス社)。