「どうすれば、相手を気持ちよく乗せられますか?」
営業や商談、宴会の席で、こんなご相談をよく受けます。気の利いたトーク、引きつける話術、うまい切り返し…。多くの方は「乗せる=話す技術」だと思っていらっしゃるようです。
ところが、私がこれまで出会ってきた乗せ上手な人ほど、実は自分はあまりしゃべっていないのです。ベストセラー『人は話し方が9割』(永松茂久著/すばる舎)にもありますが、人は誰しも「自分のことに一番興味がある」生き物です。だとすれば、相手を乗せる最短ルートは、こちらが気の利いたことを言うことではなく、相手が乗りたがっているテーマを掘り起こしてあげることなのです。
例えば、凧揚げを思い出してください。凧をうまく揚げられない人は、たいてい必死に走り回ります。でも、本当に高く揚がるのは、走るのをやめて「風」に乗せたときですよね。たとえてみれば、自分が走り続けるのが「話し方」、相手の中に吹いている風を見つけるのが「聞き方」です。乗せ上手は、風を探すのがうまいのです。
主役は、あくまで相手
では、その「風(相手の興味)」を、どう見つけるのか。
私がおすすめしているのが「エモーショナルリスニング」です。大層な名前をつけていますが、平たく言えば「感情を乗せて、ノリノリで聞かせてもらう」こと。コツは、相手の言葉の中から、ほんの少し熱がこもった単語を拾うことです。相手に話を聞きながら、声が大きくなったり、前のめりになったり、つい言い直したりしたところに、その人の風が吹いています。そこをすかさず掘る。
掘るときは、自分の言葉にほんの少しでいいから「感情を乗せる」ことです。いきなり感情を乗せるのが難しい場合は、頭の中で助走の言葉をつぶやいてから、相づちを打つのがお勧めです。「マジで〜!?」「うわっ、悲惨!!」「アンビリバボー!!」など、なんでもいいので、自分でしっくりくる言葉をいくつかストックしておいて、相手の感情に合わせて頭の中でそれをつぶやいてから「そうなんですか」と相づちを打ってみましょう。きっと平坦で無味乾燥な相づちにはならないはずです。
逆にやってしまいがちなのが、相手の話を自分の話にすり替えること。「釣りですか。私も昔やってましてね」と語り出した瞬間、相手の風はピタッと止まります。せっかく揚がりかけた凧を、自分から引きずり下ろしているようなものです。主役は、あくまで相手なのです。
芸人時代、好かれていた先輩
とはいえ、私も芸人のときはよくやらかしてました。こちらは「よかれ」と思って「話に乗った」「共感した」つもりでいるのに、よく「今は俺が話してるんだよ!!」と先輩に怒られたものです。話の借りパクは自覚がないので注意が必要です。
<例>お客様から「先週、久しぶりに釣りに行きまして」と話しかけられたときの返し方
×「そうなんですね。ところで、例のお見積もりの件ですが…」(要件を切り出す)
×「そうなんですか! 実は私、釣りが趣味なんです。こないだも…」(自分の話をする)
〇「釣り! いいですねぇ。何が釣れたんですか?」(風に乗せる)
<例>会話の掘り下げ方
お客様「先週、久しぶりに釣りに行きまして」
担当者「釣り! いいですねぇ。何が釣れたんですか?」(風に乗せる)
お客様「アジです。それが入れ食いで」
担当者「(身を乗り出して)えっ、入れ食い!? それは興奮しますね! どこの海ですか?」
ここで大事なのは、相手が「凄いでしょ」と思っている部分に、こちらも本気で「凄い!」とノってあげること。Funny(笑わせる)ではなく、Interesting(面白がる)を狙うのです。芸人時代、ウケを狙う人より、人の話を心底面白がる先輩のほうが圧倒的に好かれていました(笑)。
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●文/桑山元(くわやま げん)
研修講師・お笑い芸人・俳優。早稲田大学教育学部を卒業後、大手損保会社に入社。新入社員代表として答辞を務める。入社2年目に資産運用担当者として1,000億円を運用。その後、メインバンク本店担当部署で法人営業を経験。同社を退社後、声優養成所を経て、時事ネタを得意とするコントグループ「ザ・ニュースペーパー」に19年間所属。2022年に退団し、芸人と研修講師の二刀流で活動スタート。会社員時代に培ったビジネススキル、お笑い芸人として磨いたコミュニケーションスキルとアドリブ力などを武器に、企業や自治体などで数多くの研修を実施。メディア出演・掲載実績多数。著書に『すぐ使える!おもしろい人の「ちょい足し」トーク&雑談術』(日本実業出版社)。キャリアコンサルタント(国家資格)、損保代理店資格(特級・一般)、ニュース時事能力検定(準2級)。