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シゴトの風景

第128回「派遣3年ルールの現実」

働く個人にこれまでのキャリアや仕事観を聞き、企業が人を雇用する上で考えなければならないことを探ります。(2024年6月3日)

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「今の職場で働き始めて、まもなく丸3年。仕事にもだいぶ慣れ、楽しくなってきたところなのに、そろそろ次の派遣先を探さなくてはいけなくて…。派遣社員の“3年ルール”って、いったい誰のためのものなんでしょうね」
 新卒で働いた会社を2年で辞め、その後は派遣社員として大手の求人サイト運営会社や広告代理店、Webサービス会社などを転々としてきた宮本輝子さん(仮名・38歳)。派遣社員という雇用スタイルで10数年間働き続けてきたが、3年ルールは「実態に合っていない」と感じるという。



 3年ルールとは、一部の例外を除いて派遣先企業の同じ部署で3年以上働くことができないというもの。2015年9月に行われた「労働者派遣法」の改正によって、新たに設けられたルールだ。勤務歴が3年を超えた場合、派遣先企業にその派遣社員を正社員にする努力が求められるなど、そもそもは派遣労働者の処遇向上のために推進されたものだった。
「私の知っている限り、派遣社員は3年で契約解除というのが現状です。実際、私も3年ごとに職場を変わってきました。派遣先企業から『うちの正社員になりませんか?』と言われたことなどありません」

 宮本さんは一度だけ、派遣先企業から頑張りや実績が評価され、「契約社員にならないか?」と打診されたことがあるそうだ。
「ネームバリューのある大手広告代理店でしたし、広告制作に携わる刺激的な仕事でおもしろかったので、それもありかなと思ったんです。ところが、派遣社員で同じ仕事をする場合と比べて収入がダウンすることを知り、お断りしました」

 宮本さんによると、本来の目的とは裏腹に、3年ルールによって多くの派遣社員が不安定な状況に追い込まれているのが実態だそう。新しい仕事に就いて3年というと、ある程度仕事の知識やスキルが身につき、仕事が楽しくなってくる頃。そのタイミングで、多くの派遣社員はキャリアチェンジせざるを得ないのだ。

「3年置きに仕事を換え、人間関係もリセットというサイクルは、歳を重ねるごとにしんどくなってきました。派遣先の仲良しの社員さんが言っていたのですが、企業側としても3年ごとに新人を一から教育しなくてはいけないので大変とのこと。3年ルールは、誰にとってもメリットがないと感じています」

 実は、同じ会社で派遣社員として、3年以上働く方法もある。部署を異動すればリセットされ、また3年間働き続けることができるのだ。また、派遣元で無期雇用の派遣社員になれば、3年ルールの適用除外となる。
「とはいえ、そこまで対応してくれる企業はまれな印象です。ただ、かつての同僚の中には自ら積極的に交渉を重ね、派遣先の嘱託社員になった人や、フリーランスになって業務請負で同じ仕事を続けている人もいました」
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