人手不足倒産が増加
東京商工リサーチの調査(11月発表)によると、2025年1〜10月の人手不足倒産は323件(前年同期比30.7%増)で、年間最多の昨年を上回りました。年間300件超は2013年の調査開始以来、初めてです。要因別にみると「従業員退職」95件(同53.2%増)、「人件費高騰」114件(同37.3%増)となっています。10月から最低賃金が全国平均1,121円に引き上げられ、さらに人件費の高騰が見込まれます。
現在、多くの企業が人手不足に悩まされ、採用活動に苦労されていることと思います。少子高齢化などの影響で人材確保は年々難しくなっており、もはや企業にとって恒常的な課題と言えます。「求人を出しても応募がない」「内定を出しても辞退される」「採れても辞める」―経営者や人事担当者の多くは、そうしたお悩みを抱えているのではないでしょうか。
これまで私は、さまざまな企業の採用コンサルティングに関わってきました。今回、採用活動を成功させる土台になるものであり、すべての大本になることをお伝えしたいと思います。
多くの企業ができていない「募集ターゲット」の言語化
採用活動は求職者に応募してもらい、入社してもらい、最終的には定着してもらう必要がありますが、うまくいっていない多くの企業には共通点があります。それは、募集ターゲットが明確に言語化できていないことです。募集ターゲットとは、企業が求めている人を、具体的に定義した人物像のことです。
採用担当者の方に「どんな人を採用したいですか?」と質問すると、採用がうまくいっていない企業の担当者からは「コミュニケーション能力がある人」という答えが返ってくることが多いです。残念ながらこれは、募集ターゲットが言語化できているとは言えません。
コミュニケーション能力には、さまざまなスキルがあります。「傾聴力」「プレゼンテーション能力」「雑談力」「調整力」「交渉力」など、例をあげたらきりがないのですが、これらはすべてコミュニケーション能力です。一口にいってしまうと、「聴く」と「話す」という真逆のスキルが含まれることになります。募集ターゲットに求めるものとして見極めるためには、解像度を上げる必要があります。また、求職者にも漠然としたイメージしか伝わらず、募集する企業との間に認識のズレが生じます。これが採用のミスマッチや早期離職につながるのです。
「どんな人を採用したいか?」について言語化するには、仕事内容から「どのような資質が必要なのか?」「会社の社風や文化に合うのはどんな人か?」について掘り下げていくことです。例えば営業職でもルート営業、提案営業、新規開拓営業があり、仕事内容によって必要な資質やスキルは異なります。
●文/神谷海帆(かみや みほ)
株式会社ライフファシリ代表取締役、中小企業の“人の力を最大化する”専門家、感情コンサルタント。
大学卒業後、教育業界に身を置いて広報や学生のキャリア支援に従事。大手教育事業会社では営業成績女性全国トップで表彰され、管理職も経験。在職中にパワハラでうつ状態になったことをきっかけに産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士の資格を取得。現在、東京都の人材確保総合サポート事業の採用コンサルタントとして年間約40社、計300社以上の中小企業の採用〜定着支援を行う。エンゲージメントやモチベーション、コミュニケーションなど、さまざまなテーマで企業研修やセミナーも実施。著書に『100%仕事で折れない感情マネジメント』(clover 出版)、『感情のメッセージに気づくと、人間関係はうまくいく』(三笠書房)。