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人事のための「お金」の学び(小橋一輝)

3層で採用コストを「見える化」〜1人採るのにいくらかかる?〜

人事の仕事(採用・定着・育成など)は、「会社のお金をどう使うか?」を考えることでもあります。人事に求められる会社のお金に関する知識や考え方を解説します。(2026年6月9日)

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「1人あたり採用コスト」を計算してみる

 
3つの層を合算して、自社の「1人あたり採用コスト」を試算してみましょう。計算式は「(直接費用合計+間接費用合計)÷採用人数」です。離職者が出た場合は、再採用分のコストも加えると実態に近い数字が見えてきます。

 例えば、年間5名採用し、直接費用の合計が150万円、採用担当者の年間工数換算が60万円、研修・育成コストが50万円だとします。合計260万円を5人で割ると、1人あたりの採用コストは52万円です。これが「採用の真のコスト」です。

 この数字を経営者と共有することで、「安い求人媒体を使えば節約できる」という表面的な議論から、「採用の質を上げて定着率を高める方が長期的に安い」という本質的な議論に移行することができます。
 採用コストの見える化は、人事担当者が経営に貢献できる、最も具体的な入り口の1つです。





採用コストの削減分を、賃上げ原資に回す

 採用コストを正確に把握すると、もう1つの可能性が見えてきます。採用プロセスの効率化や定着率の向上によってコストを削減し、その分を在籍社員の賃上げ原資に回すという発想です。

 例えば、採用コストを1人あたり10万円削減できれば、年間5人採用の企業では年50万円の原資が生まれます。月換算で約4万円。仮に20人の在籍社員に配分すれば、1人あたり月2,000円の賃上げに相当します。金額としては小さく見えるかもしれませんが、「外部への支出を減らして内部への還元を増やす」という構造転換は、中長期的に見て非常に重要な方向性です。

 採用費を削って賃上げに回すという発想は、一見すると逆説的に聞こえます。しかし採用コストの見える化という地道な作業が、賃上げという経営課題に直結することを、数字は明確に示していると言えるでしょう。


今回の「一歩」

 
まずは、直近1年間の採用活動を振り返り、直接費用(求人広告費・紹介手数料など)の合計を採用人数で割って「1人あたり直接採用費」を計算してみてください。その数字に、担当者が採用業務に費やした時間の人件費換算を加えると、より実態に近いコストが見えてきます。

 人手不足が叫ばれる昨今ですが、目先の採用に捉われることなく、まずは自社の採用コストから見直してみてはいかがでしょうか。



●文/小橋一輝(こばし かずき)
株式会社Elavis代表取締役、財務・金融コンサルタント、銀行取引アドバイザー
大学卒業後、地方銀行に入行。融資渉外担当として、多種多様な企業の創業から事業承継までのさまざまなステージをサポート。2019年に独立し、元銀行員としての豊富な経験を活かし、企業の資金調達や銀行取引の健全化などを支援。これまでに500社以上の企業、延べ1,000人以上の経営者・起業家・開業医を支援し、財務戦略の最適化をサポート。セミナー登壇・企業研修の実績多数。
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